2人にとっての「おいしい」の定義とは…
2人にとって“おいしい”とは何なのかを聞いたところ、有賀さんは「食べるシチュエーションや環境に左右される」とのこと。
「出した料理を家族が食べて、楽しそうに『おいしいね』と言っている状態が、自分にとってもおいしいと感じる瞬間ですね。逆に、おいしくできたと思って出したのに、家族の反応が悪かったりすると、自分もその先はおいしく感じなくなっちゃう。そういうことが自分の場合はありますね」
一方、水野さんにとってのおいしいは、「美しく仕上がっているもの」だという。
「僕がカレーを作るときには2つの側面があって、1つはカレーの全容解明をしたいということ。こっち側の活動においては、僕はおいしいという感覚は捨てました。おいしいというのは自分の好みなので、カレーを解明しようとしたときに好みが入るとブレるから捨てなきゃいけないんです」
もう1つの側面としてカレー作家があり、アーティストとしてカレーを作っているという感覚が常にあるそう。
「それは料理人とはまた違うんです。僕はカレーを作るときには常に自分の作品を作っている。作品作りをしているときは、自分の好みも前面に出せるのですが、僕はおいしいという感覚はイコール美しいと理解しています。例えばカレーの場合は、ソースの色味や液面の油が浮いた感じの表情、艶、具の形状などを見て、美しいカレーができたと思ったときはおいしいなと感じます」
レシピ本を作る際にもっとも意識しているポイント
レシピ本を出す際のおいしいの基準については、有賀さんは「作る人の作りやすさ」を気にかけているそう。
「例えば、肉団子にいろんなものを刻んで入れるのは面倒だと思うから、何か1つだけを入れてまずは作ってみようとか。自分としてはいっぱい入れるおいしさもあると思うけれど、読者を想定すると作ってもらいやすさを優先したほうがいいことがあるんです。おいしさには幅があるから、自分がおいしいと思える範囲内であれば、今回は1つで行こうという風に決めることはあります。」
水野さんはレシピ本については、「自分が解明したものや見つけたものを披露する場」と考えているという。
「例えば、ブレンドカレーの本を作るときに、このスパイスの配合でブレンドしたときにいい香りが出るみたいなことが自分の中でわかったら、それを実感してもらうためのツールとしてレシピを開発していくんです。僕は提案したいことが先にあるから、Aを提案するために30品のレシピを開発する。逆に言うと、自分の中にレシピのレパートリーは1個もないんです」
スープのレシピに関しては、「基本的には順列・組み合わせ」と有賀さんは言う。
「例えば、キャベツを細かく刻む、大きくちぎる、ざく切りにするなどがありますよね。それをベーコンと合わせる、ソーセージと合わせる、豚と合わせるなどがあるし、出汁もいろいろある。その組み合わせを変えていけば、基本的には無限にできるんです。その中でテーマがあれば、そのテーマで横にスライドさせていくことで、例えば豚汁でも50品とか出せちゃいます」
レシピ本に載せる料理を撮影する際、持っているテクニックを全て出して作ってしまうと、読者がついてこられなくなってしまうかもしれないという問題もある。それでもやはり、有賀さんはおいしそうに作ることを意識している。
「レシピ本は、見てそれを作ってみようという気持ちになってもらえないと困るので、おいしそうに作ることは意識せずにはいられない。『私もこんな感じで作れれば』という方向に行けばいいかなって思います」
水野さんは、撮影現場ではカレー作家としての自分が前面に出てしまうため、全力で美しい姿を目指す形になるそう。
「例えば、玉ねぎを中火で15分炒めるにしても、炒め方で美しさはすごく変わるんですよ。僕が自分のテクニックで全力で美しく炒めて、それをプロのカメラマンが撮ると、本当にキラキラしてしまうときがある。だから、読者の人に『レシピ通りにやったんですけど、本のようになりません』みたいに言われちゃうこともあるんです」
ただ、それは仕方がないことだし、技術を高めていけば美しく作れるレシピではあるので、「それは別に嘘ではない」と有賀さんは語っていた。

