本読みのアルパカ内田さんと、幻冬舎作品を誰より愛する営業部のコグマ部長。
2人が、幻冬舎の新刊の中からお気に入りを選んで、おススメしあう、本コーナー!
今月のコグマ部長のおすすめはこちら。
(あわせて、アルパカさんがコグマさんにおススメした作品についても、お楽しみください)
【幻冬舎営業部 コグマ部長から、
アルパカ内田さんへオススメ返し】
久々原仁介『海のシンバル』
海辺のホテルで働く青年は、顔も知らない少女と、客室の気送管を通じた文通で交流を深めるが、ある日少女は突然失踪する。
5年後、ホテルの取材に訪れた女性との対話から、失踪の理由と秘められた真実が解き明かされる。
一方こちらは心にそっと染みるラブストーリー。これがデビュー作にして傑作なのだから紹介しないわけにはいかない。
舞台は山口県(おそらく)の海沿いに広がる港町。とあるカフェで青年・磯辺はかつて自分が働いていたファッションホテルについての取材を受けている。その磯辺の回想がこの物語の中心だ。このホテルの特性上、料金は気送管と呼ばれるチューブを経由してやり取りをする。
磯辺がフロントで働いていた6年前、このホテルに高校生とおぼしき少女が定期的に来るようになる。一緒にいるのは常に違う男。どうやら売春をしているらしい。気になる磯辺だがどうすることもできない。そんなある日、1人で客室に残っていた少女から気送管を通じてフロントへ手紙が届く。「いつもの受付さんですか?」 以来、「文通」は少女がホテルに来るたびに続いて……。
作中、2人は顔を合わせず「文通」だけで互いを知り、愛が芽生える。猥雑な空間で文字だけの静謐なやり取りが続くのだが、この過程が見事で読者はこの男女それぞれの過去を追体験することになる。やがて少女が2年前に岩手県で東日本大震災に見舞われ心に大きな傷を負っていたことがわかる……。そして、読み終えたとき、読者はタイトルの深くて重い意味を知る。
この衝撃のデビュー作、絶対に読み逃すな!

