
BSテレ東で放送中の「今宵、町寿司で 市川右團次と小粋な一献」(毎週土曜夜10:00-)。地元で長年愛されている町寿司には、独自の流儀を貫く大将と店を支える常連客の人情物語がある。同番組は歌舞伎俳優の市川右團次が酒を酌み交わしながら食事と会話を通して、町寿司に息づく人生と魅力を紐解いていく。第3回目となる1月24日の放送では、葛飾区堀切の商店街を抜けた先にある「二幸寿司」へ。
■昭和22年創業、古くから愛された町寿司
葛飾区堀切には、堀切村鎮守として創建された堀切天祖神社がある。この神社で参拝する市川。スタッフから町の雰囲気について感想を聞かれた市川は、「人との出会いを楽しみにしております」と町寿司のロケを通じての出会いを1番に思い描いた。
今回訪問する町寿司は、題して「町寿司に人生を捧げた77歳が辿り着いた絶品!出汁寿司」。初めて聞く“出汁寿司”というワードに興味をそそられるなか、たどり着いたのは商店街を抜けた先に佇む「二幸寿司」だ。
市川は「失礼いたしまーす」とあいさつしながら店内へ入り、大将と女将に「市川右團次と申します」と丁寧に挨拶して着席。大将と女将が切り盛りする店内は長い歴史を持つものの、木のカウンターや椅子などがピカピカに磨かれた清潔感に目がいく。ごちゃごちゃとした飾りや奇をてらった置物もなく、落ち着いた雰囲気に包まれながら食事ができる。
ちなみに大将の久保田恭司さんと女将のヤヨエさんは小学生からの同級生の夫婦で、77歳になったとのこと。2人でカウンターに立ち、朝から晩まで一緒に店を営んでいる。市川が「お2人で“今日は何にしようか”みたいな」と投げかけると、ヤヨエさんは「こっちが決めます」と笑顔。メニューについては恭司さんが決めるようだが、恭司さんは「他のことは全部決められちゃうもんでね」と“普段の主導権”はヤヨエさんに握られていると冗談交じりに明かした。
■2種の酢に2種の出汁をあわせたこだわりの合わせ酢
町寿司のビールと言ったら、やはり大瓶。運ばれてきた黒ラベルを手酌で乾杯しながら、“自分のペースで楽しめる手酌が1番”と通な発言が飛び出した。その日によって変わる本日の3種お通しはもずく・つぶ貝の煮付け・黄金イカで、どれも酒が進むものばかり。
続いていただいたのは刺身3種盛りで、この日は中トロ、ヒラメのエンガワ、シロイカというラインナップだ。まずエンガワをいただいた市川は「もちもち食感が!」と感心しきりで、意外な食感に驚きの表情を見せる。またこだわりの沢ワサビは奥多摩の清流で育った逸品。茎の部分を少し加えることでキレのある辛味と香りを両立させている…のだが、市川に「これはどちらのワサビなんですか?」と聞かれた2人は「なんだっけ」「すぐ忘れちゃうの、やんなっちゃうね」と笑う。そんなお茶目なひと幕も、温かい町寿司ならではの光景だろう。
握りでは小肌を注文した。水温が下がるこの季節の小肌は身が厚く、脂も乗っていると大将。「シンプルなのが良い」と喜ぶ市川だったが、さすがというべきか「ちょいとこの、シャリの温度?」と細かい技術に気が付いた。冬場はシャリの温度を少し温かくすることで、身が固まりやすい冬の魚の脂を溶かして旨みを広げているのだとか。
さらに貝類が大好きな市川は、貝を勧められるとすぐに飛びついた。「よくぞおっしゃってくださいました!」と喜ぶ市川に提供されたのは、旬のホタテ。貝柱は握りに、ヒモと肝はさっと湯がいて臭みを飛ばして刺身で提供される。「ん〜美味しい」と思わず声を上げてしまうほどだ。
そして市川は、ここでも「このシャリなんですけど…ひょっとしてここになにか、隠し味があるような」と気がつく。同店では鰹や昆布の出汁を2種類の酢にあわせた秘伝の「合わせ酢」を使っており、これが「出汁寿司」と呼ばれる所以だという。代々の味で、恭司さんも先代である父から受け継いだときは「一度教えたら二度と教えないんでいいんだって。そういう風な人だったから」と修業時代の苦労話を明かした。
和気藹々と食事を進めていると、月3回は来店するという常連さんが訪問。ヤヨエさんが「市川右團次さん」と常連さんに紹介すると、「はじめまして」「ようこそいらっしゃいました堀切まで」と歓迎ムードで出迎えてくれた。常連さんとも改めて乾杯を交わし、町寿司ならではの温かい空気を楽しむ市川。
常連さんは女将お手製の煮付けや、白子ポン酢といったメニューを注文する。特に白子ポン酢はオススメで、ポン酢は“最後の一滴まで飲んでしまう”というから相当だ。そうまで言われてはと市川も常連さんオススメの白子ポン酢を頼むのだが、ポン酢にうるさいと自称する市川も「すごく美味しい」と素直に感動させられるクオリティーだった。
■町寿司ならではの味わい
「今宵、町寿司で市川右團次と小粋な一献」では、お世話になった町寿司にお礼の言葉と右團次手拭いをお渡ししている。今回は「ご夫婦お二人に幸あれ」と「二幸寿司」にちなんだ言葉を贈る。
落ち着いた雰囲気の町寿司は、カウンター越しに熟練の大将・女将と会話を楽しめるのも魅力。「堀切の漫才夫婦」などとも呼ばれる2人のなれそめや息ピッタリに助け合う姿を見れば、受け継がれてきたこだわりの寿司がいっそう美味しく感じられる。シャリの温度や秘伝の合わせ酢など、長年愛されてきた味も絶品。高級寿司でもチェーン店でもない、町寿司ならではの魅力を堪能していた。
「舞台で死ねれば本望」という市川の歌舞伎役者魂と、カウンターに立ち続ける久保田さん夫婦とのシンパシーも感じていた市川。次回1月31日(土)夜10時からの放送は横浜鶴見で86歳の現役大将が営む、昭和の大スターも愛した絶品寿司だという。町寿司で一献、次回のお店や出会い市川右團次の歌舞伎話も楽しみだ。

