推しのライブにも一緒に行くほど仲良しな、沙織と望。中学時代から続く友人関係でしたが、望が最近、卑屈めいた発言をするのが沙織は気になっていました。
友人の思わぬ場面に遭遇
大学卒業後、地元の中小企業に勤めた私。5年前に産休に入り、現在は息子を保育園に預けて時短で働いている。
今日も16時の退社時刻を迎えると、慌てて自転車を走らせた。すると前方に、見覚えのある車が細い道路で路駐していて、思わずブレーキをかけた。望と勝さんの車だとわかったからだ。勝さんの趣味で、珍しい外車に乗っているから、2人の車はよく目立つのだ。
あいさつをしようと近づいてみると、窓が開いていたのか、会話が漏れて聞こえた。
「あの発言ってどういうこと?俺に不妊の原因があるとか言いたいわけ?病院に付き添ってやったのに、恥かかせんなよ」
「違うよ、でも先生も言ってたでしょ?夫婦の双方が検査を受けた方がいいって」
「俺が原因じゃねえよ、自分が出来損ないなのに、俺になすりつけるなよ」
「調べてみないとわからないでしょ?」
「うるせえな、黙れよ」
勝さんが望を小突くのを見て、目を疑った。力の強い勝さんが小柄な望みを小突くなんて、立派な暴力だ。
逃げるように去る友人夫婦
「ねえ、何してるんですか」
気がつくと自転車を放り出し、運転席側に近寄っていた。助手席の望は驚き、手前の勝さんは驚いた様子を見せた。
「あ、望の友達の…」
「何してたんですか?今、望のこと叩きましたよね」
「いや、ただの夫婦喧嘩ですよ、他人にどういう言われることではないと思いますけど」
さっさと去りたいのか、勝さんはエンジンをかけた。
「望、叩かれてたよね?」
望に確認しようとしたのに、望はうつむいてこっちを見ない。
「失礼します」
窓を閉め、さっさと発車してしまった勝さん。暴力は認めなかった。あんな男性と一緒に居るから望が卑屈になってしまったのだと、私は直感的にそう感じました。

