職場の人間関係で、なぜか自分だけが消耗してしまう――その原因の多くは「裏表がありすぎる人」にあります。なぜ裏表のある人は、上司に本質を見抜かれにくく、評価されやすいのか。
彼らの心理メカニズムと行動原理、そして心をすり減らさずに対処するための具体策を示した、『裏表がありすぎる人』。本書から、一部をご紹介します。
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陰では上司をこき下ろす
裏表の激しい人物として、多くの人が思い浮かべるのが、本人の前では調子のいいことを言ってもち上げながら、陰で悪口を言うようなタイプである。
そのような構図は、同僚同士でもしばしばみられるが、とくに多いのが、上司に対していつももち上げるようなことを言い、自己愛をくすぐって喜ばせながら、陰ではこき下ろすようなことばかり口にする、といったものである。
そのような同僚に呆れるという人たちに、陰で上司をこき下ろすセリフを例示してもらったところ、つぎのようなものがあげられた。
「あそこまで無能なヤツが課長かよ。どうなってんだ、この組織は」
「あんなバカ上司のもとで働いてるとバカがうつりそうで怖い」
「自分の上司がアレだからね。ほんと恥ずかしいよ」
「あいつ、太鼓もちで出世しただけじゃないか。実力不足も甚だしい」
「ちょっともち上げると、すぐにいい気になって自慢話をしたり、ほんとに単細胞で笑えるわ」
「自分が無能なのに気づかないなんて、ほんとに愚かだね。バカは自分がバカだって気づかないって言うけど、まさにそれだね。うちらから尊敬されてるって本気で思ってるんだからね。お世辞に決まってるじゃない」
「参ったね、あんなに長時間、相手させられるなんて。もううんざりだよ。いい気になって話しやがって。いい加減にしろって」
調子がいいばかりか、辛辣な態度に呆れ、うんざりするだけでなく、恐ろしくもなるという人がいたが、たしかにこのようなセリフを聞くと、あまりの辛辣さに驚かざるを得ない。
しかも、上司の前では調子よくもち上げるようなことばかり言うため、上司は自分が尊敬されていると思い込んでいるわけだから、よけいに恐ろしくなる。
やや横暴なところがある上司に日頃から反感をもっている人も、「あの辛口にかかったら、ふだん偉そうにふんぞり返ってる上司も形無しだと思うとスッキリする面もあるけど、自分も陰で何を言われてるかわからないと思うと、あまりの辛辣さに背筋が寒くなった」と、その人物の辛辣さを警戒する気持ちを口にする。
このような人物は、自分のポイントアップのためには、裏表をうまく使い分けて相手をもち上げるだけでなく、ふだん親しげにつき合っている同僚を貶めるような噂を平気で流したりするので、うっかり心を許すと痛い目に遭いかねない。

なぜか上司に可愛がられる
このような裏表人間が、なぜか上司から気に入られ、可愛がられるのだから、ほんとうに嫌になる、とこぼす人もいる。実際、そうした構図は多くの職場でみられる。
裏表の使い分けの激しい人物をみていると、どうにも気分が悪いものだ。
そのような人物の言動を苦々しくみている良識ある人たちが不思議に思うのは、そんな裏表人間が、その見苦しさにもかかわらず、案外うまく出世していくことだ。
陰で悪口を言われている上司が、そんなことは夢にも思わず、「いいヤツだ」と言って気に入っている。自分が陰でこき下ろされているなんてつゆ知らず、表面上もち上げられて機嫌よくしている。
その上司のことを本気で尊敬している自分よりも、陰でこき下ろしている同僚の方が、その上司から気に入られ、何かと目をかけられているのが、何とも悔しい。そのように言う人も少なくない。
だまされている上司があまりに哀れで同情するが、ここまで冷酷に裏切って平気な彼が怖い、という人もいる。こんなヤツにだまされるなんて上司も愚かだなと思うものの、人の裏の顔ってなかなかわからないものなんだなあとしみじみ思ってしまう、という人もいる。
実際、おべっかを使う部下が誠実な部下よりも気に入られるといったケースは、どの職場でもよくみられるものだが、そこには先に指摘した自己愛に加えて、上司という立場に必然的に伴う不安も関係している。
上司がちゃんと職責を果たすには、部下たちから尊敬される必要がある。尊敬というと大げさかもしれないが、少なくとも肯定的な評価を受け、信頼されなければ、上司として部署の人間たちを引っ張っていくことはできない。
だが、上司といえども、部下のだれよりも優秀である保証などない。上司の方が経験値は高くても、上司よりも頭がよく優秀な部下がいるというのは、どんな職場にもありがちなことだ。
ゆえに、上司は常に不安を抱えている。部下からどう思われているのか、どう評価されているのかが気になる。
そんな上司にとって、自分をもち上げてくれる部下の存在は大いに救いになるのだ。
上司は不安なものだから、あからさまなお世辞であっても、自分を立ててくれて、自分に懐いてくれる部下をつい可愛がってしまうのである。


