里奈が真由の家ばかりを訪れ、愚痴や不満を一方的に話す関係に疑問を抱いた真由。対等ではない関係に気づき、距離を置こうと考え始めていた。そんな中、里奈から外食ランチに誘われて―――。
「もう誘わない」と決めていても
もうわが家には誘わないと決めた私は、遊ぼうと声をかけてくる里奈さんをかわすのに必死だった。
「今日は夫が家にいるから公園で遊ぼう」
「支援センターに新しいおもちゃが置いてあるみたいだよ」
家に誘いたくないだけで、外で遊ぶ分には特に困ることはない。だから外で会いたいのに、どうにかして家に来ようとする里奈さん。
「別の日はおうちの都合どう?」
「結菜は陽向くんの家がいいって言ってるのよ」
困っていたある日、里奈さんから珍しくこんな提案があった。
「今度さ、2人でランチ行かない?子ども抜きで、たまには息抜きしようよ」
少し意外だった。家じゃないなら、気分も変わるかもしれないし、いいかも。そう思って、私は承諾した。
場所が変わっても、関係は同じ
当日、入ったのは駅近くのカフェ。おしゃれな内装に、静かな音楽。家に呼んだわけではないから準備も片付けもないし、気軽に楽しめると思った。でも、結果として私は里奈さんに嫌悪感を抱くことになる―――。
「聞いてよ〜、最近ほんと疲れててさ」
席に着くなり、里奈さんのマシンガントークが始まった。義母の話、園の先生の話、他のママのうわさ。話題は途切れず、私は終始相槌係だった。
「真由さんって、ほんと聞き上手だよね」
そう言われたとき、褒められているはずなのに、なぜか胸が重くなってしまう。話は次第に、子どもの話へと移っていく。
「結菜、最近もうひらがな読めるようになってさ」
「教えてもないのに、勝手に覚えてるのよ」
「すごいね」と返しながら、私は陽向の顔を思い浮かべた。陽向はのんびり屋で、マイペース。上手にできることもあるけれど、年齢並みにできないと感じることも、まだたくさんある。
「陽向くんは、どう?」
そう聞かれて、正直に答えた。
「うちは、まだかな。焦らずでいいかなって」
すると里奈さんは、少し首を傾げて笑った。
「まあ、男の子だもんね、遅い子多いっていうよ」
その言い方が、妙に引っかかった。明確にバカにされているわけではない。でも、“うちはできてるけどね”というニュアンスが、言葉の端々に滲んでいる。
里奈さんと話していると、なんだか疲れる。私はAIロボットのように相槌だけを求められているような気がして、なんとなく嫌悪感があった。家に誘ったわけではなくても疲れるなんて、私はもしかすると里奈さんとは合わないのかもしれない。

