週刊少年ジャンプで連載された作品を原作とし、大ヒット上映中の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の制作陣によるトークショーが、2026年1月31日、東京都内で開催されました。
会場にはおよそ400人のファンが来場。吉原達矢監督(※「吉」は土に口)、中園真登副監督、音楽を担当した牛尾憲輔さんが登壇し、圧巻の映像や音楽がどのように生み出されたのか、制作の裏側を語りました。
本記事では、映画のネタバレを含みつつ、当日のトークショーの模様を詳しくレポートします!
※前回の記事はこちらから
興行収入が100億円突破! 大ヒットの『チェンソーマン』制作陣がトークショー【秘話】
撮影:grape編集部
大ヒット中の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』 制作の裏側を徹底レポ!
ファンの大きな拍手に迎えられ、3人が登壇。終始、和やかな雰囲気の中でトークショーは進行しました。
当日の来場者のうち、10回以上鑑賞したというファンが半数以上。
中には、100回以上鑑賞したという『猛者』もいたそうです。
想像以上の周囲の反響 「対応しきれないぐらい…」
まず、司会からの質問を受け、3人がそれぞれ作品への反響について語りました。
吉原:メディアなどの注目はもちろんですが、身の回りの人たちからもすごく反響があって、正直こちらで対応しきれないぐらいです…。とても嬉しく思いつつ、驚いています。
中園:家族の知り合いが観に行ってくれた、という話も聞いていて、想像以上にいろいろな人に届いているんだなと実感しました。
牛尾:僕は特にないですね。朝起きてから、寝るまで仕事するだけで外に出ず、友達がいないので…(笑)。それでも、たくさんの人が観てくれていると分かって、純粋にビックリしました。
それぞれの性格がにじみ出た回答で、反響への驚きを表現し、会場を沸かせていましたよ。
作中で尽力した制作陣 3人が果たした役割
続いて、改めて本作における3人の役割について紹介されました。
吉原:劇場作品の監督を務めるのは初めてでしたが、基本的にはテレビシリーズとやることは変わりません。
各スタッフに演出の『わがまま』を伝えたり、シーンの『夢』をかなえてもらったりするポジションですね。
中園:監督の横で、演出面のサポートをする役割です。特に、デンジとマキマがデートするシーンまでの、いわゆる『Aパート』と呼ばれる部分の絵コンテに注力しました。
マキマの目など、画面の中心に『丸』を置くような構図を意識していて、そのあたりは監督にかなり投げさせてもらいましたね。
牛尾:オープニング、エンディング、挿入歌以外のサウンドトラックを担当しています。映画はテレビシリーズに比べて尺が長いので、5分を長く感じさせるか、短く感じさせるかといった部分のコントロールを特に意識しました。
映画の制作という、意外と知らない舞台の細かな裏側が興味深いですよね…。
吉原監督(撮影:grape編集部)
藤本タツキが描く原作 独特のコマ割りをどう映像に?
原作者・藤本タツキさんが手がけた原作の独特なコマ割りやセリフ回しを、どのように映像化したのかについても掘り下げられました。
吉原:『レゼ篇』は、ラストがローテンションで終わる構成なので、そこへ至るまでのテンションの上げ下げが難しかったです。
その中でも、冒頭にデンジが相棒のビームとわちゃわちゃするシーンや、これまでにない楽曲などから、手応えを感じていました。
基本的には絵コンテありきで進めましたが、素材が動き始めると、スタッフそれぞれがいろいろな要素を足してくれましたね。
中園:いかにして、原作の漫画をそのまま映像に置き換えられるかを考えました。
同じコマ割りの中で、少しずつ表情が変化する場面などでは「どうして藤本先生はこの表情を描いたのだろう」と、考えを巡らせながら作業をしていましたね。
説明的ではない、まるでその場で発せられたようなセリフや、コマとコマの『間』をどうアニメで表現するかは、かなり難しかった点ですね。
中園副監督(撮影:grape編集部)
吉原:大変ではありましたが、牛尾さんら優秀なスタッフのおかげでよいものができたので、成果物をチェックするのが楽しかったです。
例えば、まばたきをしていたら見逃してしまうぐらいの、レゼの日常的な仕草。声優を務めた上田麗奈さんの演技力も相まって、より魅力的な女性として描けた気がしています。
制作陣の演出によって引き出された、キャラクターたちの多彩な『顔』。
原作のキャラクターの心情に思いをはせたからこそ、豊かな表情を描き出すことができたのかもしれませんね。
また、同作で映像と同様に高い評価を集めているのが、シーンを彩る音楽。
実は、映画ならではの環境を生かし、相当なこだわりが注ぎ込まれていたことが明かされました。
テレビシリーズから引き続き、作中の音楽を担当した牛尾さん。
制作面で異なる点を問われると、このように明かしました。
テレビシリーズとは違って、映画では『フィルムスコアリング』と呼ばれるやり方で、映像に合わせて音楽を作ります。尺にぴったり合わせるのはもちろんですが、重要なのは視聴環境です。
例えば、ラストでデンジとレゼが海辺にいるシーン。実は、流れているバイオリンの音は、かなり繊細な現代奏法なので、テレビだと聞こえないんですよ。
劇場は静かで、良いスピーカーで集中して聞けるので、映画ならではの表現ができました。『レゼ篇』が映画化されることを聞いた時点で、小さい音から大きい音まで使えるオーケストラの演出をやろうと思っていました。
特に、デンジとレゼが触れ合うプールのシーンでは、それがうまく作用して、やっていて楽しかったですよ。
牛尾さん(撮影:grape編集部)
牛尾さんが入念な計算があった上で表現された、作中の音楽。
デンジとレゼがプールで仲を深めるシーンは、美しい音楽の力も相まって、ロマンチックな場面の魅力が引き立てられたようですね。
デンジとマキマのデートシーン 店内の小さなBGMの秘密
途中、牛尾さんから中園さんに質問が投げかけられる場面も。話題に上がったのは、序盤のデンジとマキマのデートシーンです。
映画を観てはカフェに戻るという、同じ行動を繰り返す中で、店内でかすかに流れ続けるBGMについてでした。
中園:デンジとマキマのデートシーンでは、朝から夜まで4つの時間帯が出てきていました。
利用しているカフェは同じなので、基本的に同じような曲が流れているとは思うんですが、短い時間でも「一緒の音だ」とは感じてほしくないんです。
おそらく実際の店でも、少なくとも有線で流れていると、なにかしらかけられる音楽のパターンはありそうだなと。
時間の経過を絵だけでなく、音楽でもさらっと表現して、「このデートいいな」と思ってほしかったんです。
撮影:grape編集部
レゼがロシア語で歌う『ジェーンは教会で眠った』 制作時の苦労とは
レゼが劇中で歌うロシア語の楽曲『ジェーンは教会で眠った』が印象的な人も多いでしょう。
藤本さんが描いた原作の歌詞を実際に音にした牛尾さんが、特別な制作背景を語りました。
まずロシア語が分からず、どこで言葉を区切ればいいのか分からなかったので、翻訳家の方と重ねたやり取りは実務的にかなり大変でした。
後は、原作の歌詞を過不足なく使っているんですが、歌詞の文量が一般的なものと比べてすごく多いんです。そのまま間奏を入れてしまうと、2分以上の長い曲になってします。
ですが、映画として90秒ほどしか尺がないのが分かっていたので、途中で変拍子を入れるなどして、すごく切り詰めました。歌う際にブレスを入れるタイミングがなくなってしまうので、声優の上田さんに「人力で頑張ってもらうしかない」という感じでした。
映画ならではの美しい曲は、牛尾さんの柔軟なアイディアと、スタッフの力が結集して作り上げられたのですね。
迫力満点のバトルシーン 映像と音楽がかみ合う瞬間
終盤の迫力あるバトルシーンについての、映像と音楽の緻密な設計についても語られました。
牛尾:もともと私はダンスミュージックを作っていたんですが、音楽がずっとピークのように盛り上がっている状態だと疲れるんですよね。
なので、デンジとビームがビルに飛び込んだシーンでは、音が1回終わる構造にしています。展開のピークを後ろにしつつ、要所で見ても、盛り上がっている構成になったのではないでしょうか。
アニメのサウンドトラックをダンスミュージックにアレンジするライブを担当した経験も生きたと思います。
中園:ロックバンドの『マキシマム ザ ホルモン』さんの『刃渡り2億センチ』が、デンジがチェンソーマンに変身して車の上に乗る場面に流れますよね。音楽を流すシーンは、当初の想定とは違う位置になりました。
別のスタッフから「ここに当てた方がハマるのでは」という意見が出て、それを採用しています。
担当の垣根を越えて自由にアイディアを出し合った結果、迫力あるシーンが完成したようです。
また、事前にSNSで募集したファンからの質問に、制作陣が直接答える場面もありましたよ。
ファンから、作品内で特に手ごたえがあったシーンについて質問があると、吉原さんと中園さんがこのように明かしました。
吉原:原作ありきのストーリーを作る中で、原作を読んだ時以上に面白く観て欲しい、という思いがあったんです。原作の魅力を最大限引き出しながら、アニメならではの要素として盛り込んだレゼの小芝居などは印象的です。
また『ライブ感』のあった現場だからこそできたのですが、もともとのコンテになかったシーンをアドリブで入れています。
終盤にアドリブ要素が増えて大変になり、「なんでこんなことをしてしまったんだろう…」と後悔することもありましたが…(笑)。結果的には面白くなってよかったですね。
中園:一番はやはり、デンジとレゼのデートシーンですかね。
後は、デンジとマキマのデートシーンも印象的です。デンジの胸元にマキマが耳を当てて、心の音を聞くのは、原作を知らない人からすればなまめかしいかもしれませんが、原作を知っている人からすれば「あっ」となるシーンのはずです。
そうしたシーンを加える遊び心も意識していましたね。
2人の話からは、原作ファンはもちろん、原作を知らない人にも届くよう、細かな表現にまでこだわっていたことがうかがえます。
ファンへ送るメッセージ 「『レゼ篇』の勢いを生かして…」
最後に3人は、会場に足を運んだ多くのファンに向けて、メッセージを送りました。
牛尾:この後もチェンソーマンの話は続いていきますが、レゼはみなさんの心に残る『呪い』になったでしょうか。この映画を、このまま心の中で愛し続けていただければ嬉しいです。
中園:作中のシーンでマキマが言ったように、みなさんにとって『10年に1本の映画』になっていたら嬉しいです。感謝しかありません。
吉原:原作も2部が連載中です。『レゼ篇』で得た勢いを生かして、原作の衝撃的な展開を、アニメとしてより楽しく、面白く描いていけたらなと思います。映画をきっかけに原作を知った『新規層』が増えることも、クリエイター冥利に尽きます。
これからも応援よろしくお願いします。
撮影:grape編集部

