●「黒岩町長はわいせつ行為を行っていない」と判断
判決で、前橋地裁はまず、黒岩町長によるわいせつ行為の有無について検討した。
新井氏が町長室で黒岩町長と面会した際に録音していた当時の会話について、「会話やカップを置くような物音がするだけで、わいせつ行為が行われたことをうかがわせる音声は一切ない」と認定。
新井氏側は、町長室のドアが開いていたかどうかや面談の時間について、黒岩町長の供述が民事裁判で提出された陳述書の内容から変わっている点などを指摘し、黒岩町長が虚偽の供述をしていると主張していた。
しかし、これについて前橋地裁は、次のように指摘して退けた。
「本件面談時に黒岩町長がわいせつ行為をしておらず、特に印象に残るような出来事がなかったとすると、面談から4年以上が経過した電子書籍の出版後に、面談当時のことを思い出そうとしても、詳細な状況について覚えていないということが不自然ではあるとはいえず、変遷があることを考慮しても、録音データの内容に裏付けられている面談時にわいせつ行為をしていないという黒岩供述の核心部分を揺るがすものではない」
さらに、新井氏がボイスレコーダーを上着の中に入れて録音していたことに関して、「上着の中に手を入れて胸を触るといった動作をするにあたり、衣服の布がこすれる音等が録音されているのが自然であるところ、そのような音は一切録音されていない」と述べ、新井氏の供述を「信用できない」とした。
以上を踏まえて、「黒岩町長が被告人に対してわいせつ行為を行っていないとの事実が認められる」と判断した。

●ライターとの「共謀」を認定
2つ目の争点となった「電子書籍の発行に関するライターとの共謀」についても、裁判所はこれを認めた。
判決は、新井氏がライターに対して「町長室で黒岩町長と肉体関係を持った」と告白する直筆文書を送った後、本のことはライターに任せるという趣旨のメールを送っていたと認定。
また、ライターが電子書籍の出版直前に本の目次を新井氏に送った際、新井氏は生原稿を読みたいという依頼をせず、発売予定日に「いよいよ今日ですね、しっかり読ませていただきます」といった内容のメールを送っていたことも認定した。
前橋地裁はこれらの認定した事実を踏まえ、新井氏が、黒岩町長と性交したという内容の書籍をライターが販売することについて「十分に認識していた」とし、「電子書籍の発行について共謀があることが認められる」と判断した。


