「美奈子ちゃんと同じ高校はこわい」と訴える湊。親友だったはずの相手との、歪な関係…。麻美は、夫に相談するも答えは出ない。子のメンタルを守るべきか、将来の可能性を優先すべきか…親としての葛藤は深まっていく。
モヤモヤはおさまらず…
里佳子とのランチを終えて帰宅しても、私の心は晴れませんでした。
湊が中3の夏から塾に通い始め、志望校に向けて必死に机に向かっていた姿を思い出すと、涙が出そうになります。
湊が目指しているのは、「がんばって成績を上げて、挑戦してみる?」というレベルの公立高校。
一方、トラブルの相手である「美奈子ちゃん」は、小学校のころから進学塾に通っていて、その高校なら余裕で受かる実力があるそうです。
「ただいま……」
夜、湊が塾から帰ってきました。
顔色はどんよりと暗く、カバンを置く音もおも苦しい。
「志望校を変えたい」という娘
「湊、お疲れさま。何か食べる?」
「いらない。お母さん……あのさ、やっぱり私、志望校変えようかな」
キッチンで作業をしていた私の手が止まりました。
「……ランクを下げるってこと?」
「美奈子ちゃんと同じ高校に行くの、やっぱりこわい。もし、同じクラスになったら、また、今日みたいに教室にいられなくなる。それなら、最初から、もっと入りやすい別の学校にして、美奈子ちゃんが絶対に来ないようなところにした方がいいかなって」
湊の言い分も分かります。15歳の子にとって、教室の空気は世界のすべてに近い。でも、親としては……。
「湊…美奈子ちゃんとは、小学校からの仲じゃない。年末だって一緒に過ごしたし、親同士も知り合いでしょ? 今のケンカだって、一時的なものかもしれないよ?」
「お母さんは分かってない!」
湊が声をあらげました。
「あの子、キゲンがわるいと私をムシするの。他の子と仲良くしてると、イヤな顔をするの。私は、美奈子ちゃんが好きだけど、一緒にいると息が詰まるんだよ。高校でもこれが続くなんて、耐えられない!」
湊は部屋にかけ込み、ドアを閉めてしまいました。
私は台所に立ち尽くしました。あの子なりに、必死で耐えてきた結果の言葉だったのでしょう。

