特別養護老人ホーム(特養)で行える医療行為とは?対応困難な医療行為も解説

特別養護老人ホーム(特養)で行える医療行為とは?対応困難な医療行為も解説

特別養護老人ホーム(特養)は、介護が必要な高齢の方が生活するための介護保険施設です。本記事では、特別養護老人ホームの基礎知識、対応できる医療行為の例、対応が難しい医療行為などを解説します。

高宮 新之介

監修医師:
高宮 新之介(医師)

昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院生理学講座生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

特別養護老人ホーム(特養)の基礎知識

特別養護老人ホーム(特養)の基礎知識
特養の位置づけと入所の考え方、医療提供体制の基本を整理します。

特別養護老人ホームとは

特養は介護保険制度に基づく介護老人福祉施設で、常に介護が必要な高齢の方が入所して生活する施設です。

入浴、排せつ、食事などの介護に加え、生活に必要な支援や機能訓練、健康管理、療養上の世話が提供されます。特養は治療を中心に行う場ではなく、生活を支える場です。そのため、病院で行う検査や治療を同じ形で施設内に求めると、期待と現実がずれてしまう場合があります。一方で、持病のある方が多く、服薬管理や状態観察など医療に近い支援が日常の中に組み込まれている点も特養の特徴です。

特別養護老人ホームの役割

特別養護老人ホーム(特養)は、在宅での生活が大変難しくなった要介護の高齢の方が、安心して暮らしを続けられるように、介護と生活支援を中心に提供する生活施設です。中心となる支援は、食事、排せつ、入浴、更衣、移動などの介助です。認知機能が低下している方には、生活リズムを整える関わりや、安心して過ごせる環境調整も行われます。さらに、食事形態の調整や口腔ケア、褥瘡予防の体位変換など、医療につながるケアも日常の介護の中で行われることがあります。

医療機関のように治療を中心に行うのではなく、日々の観察と療養上の世話を通じて体調変化を早くとらえ、必要な医療につなげる役割を担います。例えば、食欲低下、むくみ、咳込み、皮膚トラブルなどの変化に気付いた場合は、看護職員が状態を整理し、かかりつけの医師や協力医療機関へ相談して受診や入院につなげます。

医療提供体制の原則

特養には医師と看護職員が配置されますが、医師は常勤で毎日診療する形とは限りません。多くの施設では配置医師が定期的に診察を行い、必要な検査や治療の方針を示します。看護職員は、日中に入所者の状態観察、服薬管理、処置、受診調整などを担うことが一般的です。

夜間や休日の体制は施設により異なるため、入所前に、夜間の連絡体制、緊急時の判断の流れ、看護職員が呼び出される条件などを確認するとよいでしょう。

特別養護老人ホームで対応可能な医療行為の具体例

特別養護老人ホームで対応可能な医療行為の具体例
特別養護老人ホームで対応しやすい医療行為を日常ケアから順に具体例で確認します。

日常的な健康管理

特養では、入所者の体調変化を早めにとらえるために、日常の観察が行われます。例えば、下記の項目を介護職員が日々のケアのなかで確認します。

顔色や呼吸の様子

食事や水分の摂取量

排せつの回数

睡眠の状態

活動量

変化がみられた場合は、介護職員が看護職員へ報告します。看護職員は必要に応じて体温、血圧、脈拍などを測定し、症状の経過を整理して配置医師へ相談します。特養での健康管理は、検査よりも観察によって異変に気付き、早めに医師へつなぐことが中心です。体調が安定している方に毎日同じ項目を測定するとは限らないため、持病や既往歴に応じて、観察すべきポイントを施設と共有しておくとよいでしょう。

日常的な処置

まず日常のケアの中で体調の変化に気付き、悪化を防ぐことから始まります。例えば、寝たきりに近い生活の方では褥瘡のリスクが高く、特養でも予防とケアが大切になります。日常の介護の中で体位変換を行い、皮膚の赤みや湿り気、痛みの訴えなどを確認して早めに対応します。必要に応じて看護職員が処置を行い、医師の指示に基づいて外用薬を使用します。
ほかにも、食事の場面では、むせ込みが増えた方に対して食事形態を調整し、姿勢を整え、食事のペースを合わせて見守りながら、食後もしばらく上体を起こして過ごせるよう支援します。口腔内の清潔を保ち、痰が絡みやすい場合は水分摂取や室内環境の調整を行い、咳込みや発熱、息苦しさなどの変化がないかを観察して記録します。

専門的な看護

特養で行われる専門的な看護の代表例としては、経管栄養、たんの吸引、在宅酸素療法の管理、血糖測定やインスリン注射の支援などが挙げられます。例えば、食事形態の調整や見守りを行っても十分な栄養が取れず、体重減少や脱水が続く場合には、胃ろうや経鼻経管栄養による栄養管理を検討することがあります。胃ろうや経鼻経管栄養による栄養管理は医療的な知識が必要ですが、特養でも対応している施設があります。

痰が自力で出しにくくなり、咳込みや呼吸苦が増える場合には、体位調整や口腔ケアなどの基本ケアに加えて、必要に応じて吸引を行う看護が必要になることがあります。慢性の呼吸器疾患で息切れが強くなる場合には、酸素濃縮器などを用いた酸素投与を継続しつつ、息苦しさの程度や酸素飽和度の変化を観察して医師に報告します。

ただし、これらの医療的ケアは、施設の体制により対応できる範囲が変わりますので直接施設に確認が必要です。

緊急時の応急処置と医療機関との連携

高齢の方の生活では、発熱、食欲低下、脱水、転倒、打撲、意識レベルの低下、誤嚥が疑われる咳込みなど、急な変化が起こる場合があります。施設では、介護職員が変化に気付いた時点で看護職員へ報告し、状態を整理して配置医師へ連絡します。緊急性が高いと判断される場合は救急要請を行い、医療機関へ搬送します。

配信元: Medical DOC

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