
本作は、片野ゆか氏のノンフィクションを原作に主演・大東駿介でドラマ化。エゴの追求だけを追い求め、気付けば寄り添う者はおらず、そばにいたのは柴犬だけだったという雑誌編集職・相楽俊一(大東)が起死回生の一手として柴犬専門誌「シバONE」を立ち上げることに。そしてそこに配属される犬が苦手な編集者・石森玲花役を飯豊まりえが演じ、編集部での人間関係や、犬によって生まれた企画で人々の心が少しずつほぐれていく姿を描く。
WEBザテレビジョンでは、愛犬である柴犬の福助(のこ)を愛する主人公・相楽を演じる大東駿介、過去のトラウマから犬が苦手な編集部員・石森を演じる飯豊まりえにインタビューを実施。犬との撮影を通して感じたこと、作品の見どころなどについて語ってもらった。
■ 言語を超えた思いがつながる瞬間が間違いなく存在するのだと感じました
――本作では、犬の雑誌企画を通して携わる人々の心がほぐされていき変化していく姿が描かれます。
大東:僕が演じる相楽という役は、犬をとても愛しているけれど、気持ちは分かっておらず、自分本位な飼い主というところから始まります。ですが、雑誌を作る上で犬のことを理解しようとしていく。撮影では1冊の本になるくらいの分厚さの原稿を作っていただきました。劇中での登場だけではもったいないくらいです。実際に犬と向き合う時間、理解する時間があったことで、相楽としてもどんどん犬との向き合い方が分かっていくという姿を演じられたと思います。言葉が分からない分、彼らの気持ちを理解しようとしますし、犬と過ごすということはこういうことなのかと、言語を超えた思いがつながる瞬間というものが間違いなく存在するのだということを感じました。
飯豊:私が演じる石森は、幼い頃に柴犬に追いかけられたことがトラウマとなり、犬が苦手になってしまった女性。相手がどう思っているのかなど人間関係に思い悩む中で、相楽さんと福ちゃん(福助)に出会い、犬の雑誌を作ることになるという役どころです。その中で、福ちゃんのマイペースさや素直な部分を見てこういうふうになりたいと感じたり、福ちゃんたちがこんなにも一生懸命真っすぐに生きているのだから、私も頑張ろうと心が解放されたり。そういった心の変化を大切に演じたいと思いました。
現場でも、ワンちゃんが自然体にマイペースでいてくれることで、気負わずにありのままでいればいいんだと感じて。自然に皆さんとの会話も増えていき、笑顔が絶えない現場になりました。その空気感は作品中の編集部にも出ていると思いますので、ぜひ見ていただきたいです。
――ベテラン編集者役で片桐はいりさん、カメラマン役でこがけんさん、獣医師役で松坂慶子さんなど、個性豊かな人々が登場しますが、撮影現場の雰囲気はいかがですか?
大東:犬たちが真ん中にいてくれるおかげで、自然と皆が仲良くなり、現場での空き時間に誰も楽屋に戻らなかったです。犬を介してスタジオの前室に集まっていました。その一体感は初めての経験でしたね。今回の作品では、撮影準備段階から動物と触れ合う姿を通して、“この人は信用できる”とみんなの中の警戒心がなくなったように思うんです。信用できるという思いを持った状態から撮影を始められたことは本当にありがたかったです。
飯豊:ワンちゃん、はいりさんのことが大好きでしたよね。
大東:ほかの皆さんにも手をクンクンするなどのスキンシップはあるんですが、はいりさんに限っては顔をべろべろ舐めていて(笑)。
飯豊:食べちゃうんじゃないかなと思うくらいで、その様子がすごくかわいかったです。
■気を遣わずにいられる、なかなか経験できない現場でした

――片桐はいりさん演じる清家(せいけ)めぐみの登場シーンも印象的です。
飯豊:第1回で清家さんが笑うシーンがあるのですが、はいりさんの笑い方が面白くて。目の前で見ていてつられて笑ってしまいそうになりました。
大東:すごくいいよね。好きやわ。
飯豊:本当に好きです。皆さん魅力的ですよね。
――現場がとてもいい雰囲気だと伝わってきます。
大東:普段僕らは役者同志、俳優として接することが多いのですが、今作では犬を介して撮影することによって“人として”向き合う場面が多かったんです。結果として、犬と共に“人として”向き合っている中で、その人のことを信頼してすごく好きになったんですよね。
飯豊:分かります。仕事の話ではないことも自然と話せました。
大東:撮影という特殊な環境の中であっても、犬にはそれを強制させてはいけない。現場では僕ら役者がまず犬をケアしなければという責任がお互いへの信頼にもなりました。
飯豊:守らなければ、という気持ちがみんなに芽生えていましたよね。
大東:それがよりチームワークを強くしましたし、“人として信頼できるか、信用できるか”という部分が見えたことでキャスト同士の信頼感、絆にもつながっていきましたね。
――本当にすてきな現場だったんですね。
大東:本当にいい現場でした。なかなか他の現場で「好きやわ」とは言えないです(笑)。
――そういう言葉も自然と出てくるような空気感だったのですね。
飯豊:当たり前のように「よし、ご飯行こう!」とみんなで食堂に行ったりしていました。
大東:みんなが別々にご飯を食べたことは一度もないんじゃないかなと思いますね。
飯豊:自然と集まっていましたよね。
――犬がいることで心がほぐれている部分もあったのでしょうか。
飯豊:まさにそうだと思います。
大東:気を遣わずにいられる、なかなか経験できないような現場でしたね。


■福助役ののこちゃんには驚かされることばかりでした
――相楽の愛犬・福助を演じる柴犬・のこちゃんすごい!と思われたところを教えてください。
大東:本当にすごいところしかなくて。お芝居心もありますし、とてもスムーズに撮影できました。その中でも、自由な愛くるしさをしっかり残してくれていて救われたところがたくさんあります。撮影中もそうですが、撮影に入る前から、キャスト陣、スタッフ陣が一体となっている実感があったんです。まさにドラマのように、犬を介して一つになっているという実感を持てたことですごく助けられました。
飯豊:勘がとても良いですし、こちらの言葉が本当に分かっているんだろうなと感じました。監督が「ここで振り向いてほしい」「ここで立ち止まってほしい」というお芝居を福助役ののこちゃんに付けるのですが、撮影に入るとビシッとお芝居をしてくれるんです。本当に賢いなと思いましたし、のこちゃんには驚かされることばかりでした。
大東:撮影の時も、最初の頃は「本番用意!」という言葉を犬が覚えてしまって、その言葉が聞こえると少しカチッと身構えてしまう感じがあったんです。なので、「撮影開始の言葉を変えて、のこちゃんに気付かれないように始めましょうか」とみんなで相談して。
飯豊:英語でやった時もありましたね。
大東:あれはかっこいい現場やった(笑)。あとスタジオで本番に入る前の始まりを知らせるブザーの音も緊張感が出てしまうのでやめようということになりました。
飯豊:のこちゃんも、人間も緊張しますよね。
大東:そうしたことで僕らも無理がなく、芝居もナチュラルにできた気がします。清家役の片桐はいりさんは今後もずっとこのスタイルでやっていきたいと言っていました(笑)。
飯豊:はいりさん、「これが一番いい」とおっしゃっていましたね。
■柴犬の姿を見て、私もこうありたいと影響を受けました。

――のこちゃんの存在がより良い現場の空気を生み出していたんですね。
大東:のこちゃんをきっかけに、新しい作品作りを教えてもらった気がします。そして何より、のこちゃんの持つ“らしさ”がしっかりとあるところが、一番の魅力だと思います。意図せず見えたものが予定していたものを超えて面白くなることもあり、のこちゃんからアイデアをもらっていると感じたことが一番驚きました。
飯豊:のこちゃんをはじめ、作中で出会う柴犬たちがカメラの前でもリラックスして伸びをしてくれるなど、自然体でいてくれることに感銘を受けたんです。人間はどうしてもカメラを意識してしまう部分もありますが、ただ一緒にその場にいるその瞬間を大切にしてくれていると感じ、私もこうありたいと影響を受けました。
大東:僕は、役を演じていく中で、“ただそこに生きている”ということを目指しています。ですがどうしても頭で考えたり、何かに縛られたりしてしまう。それをできる限り排除していくことが俳優としての仕事でもありますが、あれだけ自由にそこにいてくれる犬たちの姿を見て、こうあるべきだと感じましたし、僕たちも何かを解放して自由度を広げられていったように思います。そういう部分を引き出して、連れて行ってくれるような感覚でしたね。
――犬たちとの共演によって、想像していなかった自分に出会いましたか?
大東:音ですかね。自分はこんな声で「福ちゃ~ん!」と言うんだと(笑)。こんな音が出せるんだと驚きました。
飯豊:(高い声で)「かわいいですね~」って言っていましたもんね。
大東:せりふを超えた感情が出てきたので、ありがたかったです。

■それぞれの“らしさ”が魅力だと捉えていく現場でした

――犬とのお芝居は難しい面もあったと想像しますが、いかがでしたか?
飯豊:大体のことが予定調和にはいかなかったです。例えば、石森のことが気になってワンちゃんが追いかけてくるというシーンがあったのですが、やはり初めて会った人に対して、ワンちゃん自身もその人間のことを知らないのに追い掛けるということは難しいですよね。でもそれをお芝居として成立させなければいけないので、その点はとても難しかったです。いかにこちらに興味を持ってもらえるかというところから始まるので、大変でした。
大東:確かに最初は大変でしたね。ですがこのドラマのテーマとして“動物の魅力”“犬と暮らすこと”を描く際に、やはり予定調和ではいかないことが多いと思うんです。それこそが犬の魅力でもあると思うので、監督が求めている画ではなかったとしても、「のこちゃんの魅力が出ているからOKでは?」という空気に現場のみんながなっていきました。
飯豊:「今のはのこちゃんが魅力的だからOKですよね」「OK!」というスタッフさんとのやり取りもありましたね。
大東:一見、大変に見えることだったとしても、それぞれの“らしさ”が魅力。予定にない魅力が出ている瞬間だと捉えていく現場でした。
飯豊:そこがとても良かったですよね。例えば、ワンちゃんが撮影場所から出て行ってしまった時にも、「そうだよね、楽屋帰りたいよね」「何回も飽きたよね」って。何で立ち位置にいてくれないんだろうと思う人は誰もいなかったです。
大東:そう、一人もいなかった。
飯豊:皆さん常に「ありがとうね、今日も一緒にお芝居してくれて」と言っていました。
大東:そういう方たちばかりだったので、それはもうみんなのことを好きになりますよね。予定通りにいかなかったとしても、誰一人文句もなく、そういうものだよねと分かち合える方々だったので最高でした。心穏やかに、本当に心地いい現場でした。
――最後に、作品の見どころ、伝えたいメッセージをお願いします。
大東:この作品は、ペットを飼うことを助長しているわけではないんです。犬と生きるということは、かけがえのないものをもらえるけれど、大きな責任もある。そのことに丁寧に向き合った作品になっていると思います。僕が演じる相楽という不器用な人間を通し、犬とどのように時間を共にしていくのか、というメッセージが伝わるとうれしいですし、新しい発見や考えるきっかけになればと思います。同時に、より動物に優しい社会になってほしいという思いも込められています。そして何より、見終わった後、温かい気持ちでいい夢が見られるようなドラマですので楽しみにしていただきたいです。
飯豊:大東さんがおっしゃったように、より動物に優しい社会になってほしいという思いが届いたら本当にうれしいですし、参加して良かったとより思えます。保護犬なども増える中、一匹でも多くの子が人間と共に生きていけたら…と。ペットはアクセサリーではないですし、きれいな部分だけではないということも含めてドラマでも描いていますので、人と犬が一緒に生きていくこと、その人生というものにもぜひ注目して見ていただきたいと思います。


