「若年性アルツハイマー」と診断されたら… 寿命10年の壁を越えるために家族ができること

「若年性アルツハイマー」と診断されたら… 寿命10年の壁を越えるために家族ができること

少しでも長く充実した生活を送るためには、適切な医療とケアが欠かせません。薬物療法による症状管理や、栄養管理、身体機能の維持といった取り組みが、生活の質の向上や寿命延長につながります。ここでは、具体的な治療法やケアの方法について、医学的な知見をもとに詳しく紹介します。

鮫島 哲朗

監修医師:
鮫島 哲朗(医師)

脳神経外科
東京逓信病院脳神経外科部長
脳腫瘍頭蓋底外科センター長

【経歴】
平成2年3月宮崎医科大学(現宮崎大学)卒業
平成2年6月宮崎医科大学(現宮崎大学)脳神経外科入局
平成3年4月九州大学救急部研修(厚生省研修プログラム)
平成14年4月Duke University Medical Center, USA
University of Torino , Italy
平成22年2月NTT東日本関東病院脳神経外科主任医長
平成25年4月浜松医科大学脳神経外科准教授
令和6年10月東京逓信病院脳神経外科部長脳腫瘍頭蓋底外科センター長

【専門・資格】
脳腫瘍頭蓋底腫瘍困難な脳外科手術等
医学博士
日本脳神経外科学会 専門医・指導医
日本脳卒中学会 専門医

若年性アルツハイマーにおける寿命延長のための取り組み

若年性アルツハイマーの方が少しでも長く、充実した生活を送るためには、適切な医療とケアが必要です。ここでは、具体的な取り組みを紹介します。

薬物療法と症状管理

現在、若年性アルツハイマーに対する根本的な治療法はありませんが、症状の進行を遅らせる薬は複数あります。代表的なものは、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬です。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は、脳内のアセチルコリンの分解を抑え、神経伝達を改善します。ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなどが使用されます。これらの薬は、記憶や思考の機能を一時的に改善したり、維持したりする効果があります。

NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンは、神経細胞の過剰な興奮を抑え、神経保護作用を発揮します。これらの薬は、認知機能の低下を緩やかにし、日常生活動作の維持に役立ちます。また、行動・心理症状(BPSD)と呼ばれる不安、焦燥、攻撃性、幻覚などに対しては、抗精神病薬や抗うつ薬が用いられることがあります。ただし、副作用に注意しながら慎重に使用します。薬の効果や副作用は個人差が大きいため、医師と相談しながら調整することが重要です。

薬物療法だけでなく、生活環境の調整や心理的サポートも重要です。規則正しい生活リズムを保つ、落ち着ける環境を整える、本人の残存能力を活かした活動を取り入れるといった工夫が、症状の安定につながります。家族や介護者が適切な対応を学ぶことも、症状管理に大きく寄与します。本人にとって心地よい環境を整えることで、穏やかに過ごせる時間が増え、生活の質が向上します。

栄養管理と身体機能の維持

若年性アルツハイマーの方は、進行に伴って食事摂取が困難になることがあります。食事を忘れる、食べ方がわからなくなる、嚥下機能が低下するといった問題です。栄養状態が悪化すると、体力が低下し、感染症にかかりやすくなります。このため、適切な栄養管理が寿命延長の鍵となります。十分な栄養を摂ることで、身体機能を維持し、合併症のリスクを減らすことができます。

食事は、食べやすい形態に工夫し、十分なカロリーとタンパク質を確保します。嚥下機能が低下した場合は、トロミをつけたり、ペースト状にしたりします。また、食事の時間を決めて規則的に提供することで、生活リズムを整えます。水分摂取も重要で、脱水を防ぐために意識的に水分を摂るよう促します。食事の際は、本人のペースに合わせてゆっくりと介助し、誤嚥を防ぐことが大切です。

さらに、身体機能を維持するためのリハビリテーションも欠かせません。歩行訓練、ストレッチ、軽い運動を継続することで、筋力や柔軟性を保ちます。寝たきりになるのを防ぐことで、合併症のリスクが減り、生活の質も向上します。理学療法士や作業療法士と連携し、個々の状態に合わせたプログラムを実施することが望ましいです。日々の小さな運動やリハビリの積み重ねが、長期的には大きな効果をもたらします。

まとめ

若年性アルツハイマーは、65歳未満で発症するアルツハイマー型認知症で、働き盛りの世代に大きな影響を及ぼします。初期には記憶障害や思考力・言語機能の低下、意欲の減退、感情コントロールの難しさが見られ、遺伝的要因や生活習慣病、脳内へのアミロイドβやタウタンパクの蓄積が発症に関与するといわれています。診断後の平均的な生存期間はおよそ10年で、病状は段階的に進行し、終末期には全面的な介護や緩和ケアが必要となります。若年性アルツハイマーは、本人だけでなく家族全体に影響を与える病気です。早期発見と適切な治療により進行を緩やかにすることが可能であり、医療や介護の専門家と連携しながら、本人と家族が納得できる時間を過ごすことが何よりも大切です。

参考文献

厚生労働省「認知症施策」

国立長寿医療研究センター「AMED研究若年性認知症の有病率・生活実態調査」

日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」

配信元: Medical DOC

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