夫はありさの家出を、ただの体調不良だと思っているようだった。娘からパパを奪っていいのかと迷うありさに、母は「ママが笑ってないのは子どももつらいよ」と告げる。その言葉に、ありさは離婚という道が見え始めるのだった。
今後を考え、苦しみ悩む
「体調は大丈夫?無理しないで」
満から送られてきたメッセージを、もう一度読み返す。 たったそれだけの、まるで他人事のようなメッセージ。 私がなぜ家を出たのか、彼は本当はわかっているはずだ。 義両親とギクシャクしている姿も、幾度となく見ているはずだから。
それなのに、彼は見て見ぬふりをしている。 私が抱えている問題は、満にとって、向き合いたくない面倒なことなんだろう。
このまま、味方のいない場所で暮らすのはつらい。 メグのためにも、私があの場所に戻って幸せに生きることは無理だ。 何度も、何度も、離婚という言葉が頭をよぎった。
でも、それでいいのか? 私の気持ちで、メグからパパを奪っていいのだろうか。 メグは満のことが大好きだ。 満も、メグにはいつも優しくしてくれる。
メグは、何も悪いことをしていないのに、どうしてこんな思いをさせなくちゃいけないんだろう。 私は、メグの顔を見ては、迷って、また苦しくなった。
実母の言葉
「ありさ、ちょっとこっちに来て座りなさい」
母が、リビングのソファーに手を置いて私を呼んだ。 メグは和室の積み木で楽しそうに遊んでいる。
「ママ、見て!メグちゃんの、おしろー!」
メグは満面の笑みで、崩れかけの積み木の城を指差した。 その無邪気な笑顔が、私の心を締め付ける。
「メグちゃん、すごいね!ママも見てごらん?」
母が優しく私に話しかけた。 私は、力なくうなずくしかできなかった。
「ありさ」
母は、私をまっすぐに見つめ、小さな声で語りかけてきた。
「手伝うから、離婚した方がいいんじゃない?ママが笑ってないのは、子どももつらいよ」
その言葉を聞いて、私はハッとした。 実は私の母はシングルマザーだ。私が小学生の頃に離婚した。理由は詳しくは知らされていない。育ち盛りの私を育てきるには苦労もたくさんあったはずなのに、母はいつも、私には笑顔を見せてくれた。
そんな母に言われた「ママが笑ってないのは子どももつらい」という言葉は、私の心の奥底に響いた。

