怒りや悲しみ、失望といった感情が心の中で渦をまいていた。このどうしようもない気持ちを、自分一人で抱えきることができなくなった美咲は、母に電話をかけ…。
行き場のない気持ち
雄太から、「お金をだまし取られた」と聞いた日、私は一人で泣いた。
夫への深い失望…2度も裏切られたくやしさ、そして、何もできない自分自身に対する情けなさ。
それまで「やり直そう」と、必死に自分をふるい立たせていた気持ちは、どこかに吹き飛んでしまった。
この、行き場のない気持ちをどうすることもできず、母に電話をした。
「もしもし、お母さん…」
ふるえる声に、母はすぐに異変を察してくれた。
「どうしたの?何かあったの?」
電話口から聞こえる母のおだやかな声に、私の心の糸はぷつんと切れた。私はせきを切ったように、これまでのことをすべて話した。
雄太が「出会い系」で女性と会おうとしていたこと…。そして、「ママ活詐欺」にあったこと。雄太の言葉のひとつひとつを、涙ながらに語った。
母は私の話をだまって聞いてくれた…。それから、ただひと言、「そうだったの…大変だったね」と声をかけてくれた。
私はそれまでの張り詰めていた緊張が解け、声を上げて泣き続けた。
自分自身の人生を守るために
一通り泣き終え、少し落ち着いたのを見計らって、母は静かに言った。
「あなた…いつでも、彼なしで生活できるように、準備しておいた方がいいわ」
その言葉に、私はハッとさせられた。母は続けて、こう助言してくれた。
「正社員で就職して、しっかりと自分の足で立てるようにしておくの。そうすれば、いつでも彼と離れることができるでしょう?いざという時に、経済的な不安で身動きが取れなくなるのは、一番、つらいことだから」
母の言葉が私の心に深く、刺さった。
確かに…私はこれまでずっと、彼に依存して生きてきた。母の言葉は、私に「自分の人生は自分で守る」という、当たり前だが、忘れていた大切なことを教えてくれた。
母に話を聞いてもらって、ようやく冷静さを取り戻すことができたのだ。

