結婚して32年。長い時間をともに過ごしてきた夫との間で、ある朝、思いがけない出来事がありました。何げない日常の1コマだったはずなのに、そのひと言が、私の中に小さな波紋を広げたのです。
飲み友だちから始まった、私たちの関係
夫とは同じ職場で働く同僚でした。若いころの私たちは、毎週金曜日の夜になると自然に集まる飲み会グループの一員で、いわゆる「飲み友だち」という関係でした。
ある冬の日、その飲み会は職場近くにある彼のアパートの一室で開かれました。20人以上が集まり、玄関は脱ぎ捨てられた靴で足の踏み場がない状態。私は自然と、皆の靴をそろえ始めていました。
その様子を、彼は見ていたそうです。後日、友人の1人から「あのときの姿が印象に残ったらしいよ」と聞かされ、その言葉がなぜか今でも脳裏に焼き付いています。飲み友だちだった私たちが結婚したのは、それから間もない春のことでした。
32年間、当たり前のように続けてきたこと
結婚してからというもの、私は毎日のように、夫が脱ぎ捨てた靴をそろえてきました。特別な理由があったわけではなく、ただそれが自然な流れだったのだと思います。32年間、当たり前のように続けてきた、ささやかな習慣でした。
ところが、つい1週間ほど前の朝のことです。夫が少しイラ立った口調で、こう言いました。
「どうせ靴をそろえるなら、玄関の端から10cm離れた位置に置いてくれないと、履きにくいんだ!」
その言葉は、私にとってまさに寝耳に水でした。

