胃潰瘍というと、胃の痛みや不快感を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、症状が進むと吐血というかたちで現れる場合があります。突然血を吐くと、強い不安を感じ、どう対応すればよいのかわからなくなる方も少なくありません。吐血は、胃のなかで出血が起きているサインであり、量や状況によっては命に関わる可能性もあります。その一方で、すべての吐血が同じ危険性を持つわけではなく、色や量、同時に現れる症状によって重症度は異なります。また、吐血は胃潰瘍だけでなく、ほかの病気が原因となることもあります。
この記事では、胃潰瘍で吐血が起こる状況や、その背景にある仕組みを整理したうえで、実際に吐血したときの対応や受診の考え方、病院で行われる治療を解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
胃潰瘍で吐血する状況とは

胃潰瘍で吐血することはありますか?
胃潰瘍が原因で吐血することはあります。胃潰瘍は、胃の粘膜が炎症を起こして傷ついた状態で、症状が軽い段階では胃の痛みや不快感として現れることが多くなります。しかし、潰瘍が進行して傷が深くなると、胃の粘膜の下を走る血管まで達し、出血が起こる場合があります。この出血した血液が胃のなかにたまり、嘔吐とともにお口から外へ出ると吐血として気付かれます。吐血は、胃潰瘍がある程度進んだ段階で現れる症状であり、日常的な胃もたれや一時的な胃痛とは異なる状態として受け止めることが必要です。
胃潰瘍で吐血するのはどのようなときですか?
胃潰瘍による吐血は、すべての胃潰瘍で起こるわけではなく、特定の条件が重なったときに起こります。潰瘍が深く掘り下がり、血管が直接傷ついた場合に出血が生じますが、強い胃酸の刺激が続いている状況では、そのリスクが高まります。また、抗血栓薬や抗凝固薬を使用している方は、血が止まりにくくなり、少しの傷でも出血が広がることがあります。吐いたものに赤い血が混じる場合は、出血してからあまり時間が経っていない状態を反映しています。一方、黒っぽいコーヒーかす状の吐物は、血液が胃のなかで胃酸と混ざり、時間が経過した結果として現れます。
胃潰瘍以外に吐血することがある病気を教えてください
吐血は胃潰瘍だけに限った症状ではありません。食道の粘膜が傷つく食道炎や、食道と胃の境目が裂けるマロリー・ワイス症候群、肝臓の病気に伴う食道静脈瘤の破裂などでも吐血が起こります。また、十二指腸潰瘍による出血が胃へ逆流し、吐血として現れる場合もあります。これらの病気は、原因や治療法が異なるため、見た目だけで判断することは困難です。
胃潰瘍で吐血したときの対応と注意点

胃潰瘍で吐血をした場合、どうすればよいですか?
胃潰瘍が原因と考えられる吐血が起きた場合は、まず無理に動かず、落ち着いた姿勢を保つことが大切です。横になれる状況であれば、身体を横向きにして休むことで、吐いたものがのどに詰まることを防ぎやすくなります。吐血の後に喉の渇きを感じたり、食事を摂りたくなったりすることがあるかもしれませんが、自己判断で飲食することは控え、病院での判断を待ちます。吐血の量が少なくみえても、胃のなかで出血が続いている可能性があるため、早めに病院を受診するようにしましょう。
吐血が命に関わることはありますか?
吐血は、出血量や出血の進み方によっては命に関わる場合があります。短時間に多くの血液を失うと、血圧が低下し、めまいや意識が遠のくなどの症状が現れることがあります。高齢の方や、心臓や腎臓の病気を持つ方は、身体への負担が大きくなりやすく、状態が急に変化することもあります。また、吐血が一度おさまったようにみえても、その後に再び出血するケースもあるため、油断はできません。吐血は胃潰瘍が進行しているサインとしてとらえ、軽く考えず行動することが重要です。
胃潰瘍で吐血をしたときの注意点を教えてください
吐血をした場合には、自己判断で市販薬を使用したり、症状が落ち着くのを期待して様子を見続けたりしないようにしましょう。特に、解熱鎮痛薬のなかには胃の粘膜を刺激し、出血を悪化させる可能性があるものがあるため、服用は控えます。アルコールも胃の粘膜への刺激となり、出血を助長するおそれがあるため避けます。また、吐血の後に無理に飲食をすると、再び吐いてしまったり、出血の状態をわかりにくくしたりすることがあります。吐いた血の色や量、吐血した回数、吐血の前後に胃の痛みやめまい、ふらつき、冷や汗などが出現したかを、可能な範囲で把握しておくと、その後の診察で重要な情報になります。

