退職代行「モームリ」から仕事を紹介、弁護士らも書類送検 何が違法とされた?

退職代行「モームリ」から仕事を紹介、弁護士らも書類送検 何が違法とされた?

退職代行サービス「モームリ」の運営会社「アルバトロス」の社長とその妻から退職交渉の仕事の紹介を受けたとして、警視庁が2月5日、弁護士ら男性3人を書類送検したことが報じられました。

報道によると、書類送検されたのは、都内の弁護士法人の代表弁護士2人と事務員の男性1人。男性らは、「モームリ」の代表らが報酬を得る目的と知りながらも、退職交渉に関わる法律事務の紹介を受けた疑いがもたれています。

先日、モームリの社長夫妻が逮捕されたという報道がありましたが、今回は弁護士側が書類送検されたという報道です。なぜ、弁護士側も違法となるのでしょうか。弁護士法の基本的な仕組みを解説します。

●弁護士は非弁護士からの仕事紹介を受けることが禁じられることがある

弁護士は、弁護士資格を持っていないのに報酬を得て法律事務を行っている者や、「法律事務の周旋」を行っている者などから、法律事務の紹介を受けることを禁じられています(弁護士法27条)。罰則は「2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」です(同77条1号)。

「法律事務の周旋」とは、法律事務の依頼者と弁護士を結びつける行為のことです。たとえば、退職に関する交渉を依頼したい人がいて、その人を弁護士に紹介する行為がこれにあたります。

今回のケースでは、モームリ側が依頼者を集め、その依頼者を弁護士に紹介していたことが疑われています。この紹介が「法律事務の周旋」にあたると考えられます。

報道によると、今回のケースでは、弁護士側が紹介料として1件につき1万6500円を支払っていたとされています。紹介料が「賛助金」という名目で実態のない労働組合に振り込まれていたとされていますが、重要なのは名目ではなく、実質的な内容です。

報酬の名目を変えても、実質的にみて弁護士が業者に報酬を支払って法律事務の紹介を受けていたといえるのであれば、弁護士法27条に違反します。

なお、仮に弁護士が紹介料などの金銭をモームリ側に支払っていなかったとしても、モームリ自体が弁護士法に違反する周旋業者であると判断された場合には、モームリから弁護士が紹介を受けることは弁護士法違反になります。

27条は、72条違反の業者から弁護士が事件の周旋を受けることを禁じています。そして、弁護士から業者への金銭の支払いがなくても、業者が72条に違反する場合はありえます。

ややこしいですが、たとえば、業者が依頼者から紹介料をもらって弁護士を紹介するが、弁護士側からは紹介料等を受け取っていない場合でも、業者は72条違反となります。結果として、業者から事件の紹介を受けた弁護士は27条違反となります。

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●なぜ業者からの紹介を受けることが禁じられているのか

27条は、弁護士でないのに法律事務を行う業者の活動を助長することを防ぐためにあります。

退職代行の例でいえば、本来は退職金や有給休暇などの問題が残っており、その点について交渉すれば明らかに退職者の利益になるケースなのに、単に退職の意思のみを通知し、その他の退職者の権利は見過ごされるリスクがあります。

「業者が法律問題の相談も受けて、相手方と交渉できるようにすれば良いではないか」と思われるかもしれませんが、相談段階で退職にまつわる法律問題についてきちんと事情を確認し、メリットとデメリットを考慮してアドバイスをしたり、相談後の方針を決めていくことには法専門家としての能力が求められます。

また、とにかく安く定型的に事務を処理するために、背後にある法律問題が見過ごされてしまうリスクが高まります。

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