
実話をもとにしたエッセイ漫画をSNSやブログで発表しているぺ子さん(@peko_comic)。不妊治療をテーマに描いた作品「原因は、俺…?」は、フォロワーの体験談をベースに制作され、「胸が苦しくなった」「自分たちのことのようだ」と共感を集めている。本作では、不妊治療が長期化するなかで、夫が自分を責め続けてしまう姿と、それに向き合う妻の思いが描かれる。※本作にはセンシティブな表現があります。閲覧の際は十分ご注意ください。
■「普通だったら…」比べるほど深くなる自己否定



物語は、夫が妻に不妊治療の副作用のつらさを打ち明けられる場面から始まる。世の中には、何の治療もせず、時間もお金もかけずに妊娠できる人がいる。そうした「普通」と自分たちを比べ、「普通の体だったら…どれだけよかったんだ…!」と叫ぶ夫。その声には、悔しさと自責の念が絡みつき、出口が見えなくなっている苦しさがにじむ。
■「別れよう」それは逃げではなく、思いやりだった
やがて夫は、「しょうこは子どもを抱くことはできない、だから…別れよう…」と妻に告げる。不妊治療を約2年続けてきた妻は、その言葉を聞き、「まるで…一緒に責められてるみたい…」とうつむいた。
夫は妻と一緒にいたい気持ちを抱えながらも、「俺がしょうこの幸せの足枷になりたくないんだ!」と感情を爆発させる。子どもを抱く夢を叶えられない自分が、妻の人生を縛ってしまう――そんな思いが、夫を追い詰めていた。
■「子どもがいなくてもいい」妻が差し出したもう一つの未来
しかし、妻は静かに、そして力強く言葉を返す。「子どもなんかいなくてもいいよ」。さらに両手を広げ、「そうだ!全国一周キャンピングカーで周るってのはどう!?」と笑顔で提案する。「子どものいる未来だけが私の幸せだと決めつけないで」「子どもの前に私がいるよ…?」――涙を浮かべながらも、妻は夫に真っ直ぐな視線を向ける。その言葉は、夫の思い込みを少しずつほどいていく。
■治療を休むことは、前に進むための選択肢でもある
ぺ子さん自身も不妊治療の経験がある。「ストレスは妊活において大敵なので、気分転換はとてもよいことだと思います」と語る一方で、「治療を休むことで時間が過ぎてしまい、その焦り自体がストレスになる人もいる」とも明かす。治療を続けるか、休むか。正解は一つではなく、自分の性格に合った息抜きの仕方を見つけることが大切なのだという。
■「身を引く」という選択に込められた切なさ
作中で夫が口にした「別れよう」という言葉について、ぺ子さんは「男女が逆だったとしても、私も同じことを言うかもしれない」と語る。それは治療から逃げたいからではなく、「相手の『子どもがいる未来』を自分が奪ってしまうのではないか」と思うからだ。相手の幸せを願うがゆえに、自分は身を引いた方がいい――そんな切ない思いが、夫の選択には込められている。
本作は、不妊治療のつらさだけでなく、「夫婦でどう生きるか」「幸せの形は一つなのか」という問いを静かに投げかけてくる。子どもを望む気持ちも、相手を思う気持ちも、どちらも本物だからこそ、簡単には割り切れない。その揺れを、真正面から描いた一作だ。
取材協力:ぺ子(@peko_comic)
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