
映画好きで知られるお笑い芸人・加藤浩次と映画ライターのよしひろまさみちが、毎週1本のおすすめ作品を語り合う「加藤浩次とよしひろのサタデーシネマ」。2月7日(土)の放送では、クリント・イーストウッドが監督・主演を務めた1986年製作のアメリカ映画「ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場」が紹介される。イーストウッド演じる鬼軍曹の描き方が賛否両論を巻き起こした一方で、人間臭い温度も感じられる本作品の魅力があらためて浮かび上がってきた。
■若々しさと“レガシー”が同居するイーストウッド作品
作品を観終えた加藤はイーストウッド監督の作風に“時代的な変化”を感じ取ったと語る。「50代に撮った映画は若々しい。いろんなことをちゃんとやろうとしていた。自分が撮りたいものを撮るんじゃなくて」という言葉からは、後年の円熟した作家性とは異なる実直で前向きなエネルギーへの評価がにじむ。近年は重厚でシリアスな作品が目立つイーストウッドだが、本作にはコメディチックな場面も多い。加藤にとってはそれが新鮮に映ったようだ。
番組中盤では作品誕生の裏側も明かされた。ストーリー自体は米陸軍で実際にあった話から着想を得ているが、企画段階で陸軍から描写を理由に拒否されてしまう。イーストウッド自ら上層部に直談判したものの許可は下りず、最終的に海兵隊が「完成した作品を軍のPRに使う」という条件付きで了承。しかし完成した作品を観た軍幹部はその過激さに激怒し、PRでの使用も中止になってしまったという。フィクションと現実、表現と組織の衝突が、そのまま映画の背景に刻み込まれているようなエピソードと言える。
物語の核心について、加藤は「描きたいのは軍を否定するのではなくて、世代間ギャップじゃないですか」と鋭く指摘。するとよしひろは、「後にイーストウッドは、“ハイウェイ軍曹は遺物(レガシー)のようなもので、それを描きたかった”と語っていた」と紹介する。監督の意図と自分の考察が重なったことに、加藤は「イーストウッドの気持ちになれた」と笑顔を見せた。
また鬼軍曹が持ち合わせる優しさを象徴するシーンの1つとして、訓練に来なくなった部下の家を訪れて子どもにそっと金を渡す場面も話題に。無骨で、不器用で、決してスマートな行動とはいえないが、それでも確かに伝わる優しさがある。加藤は「年を重ねると変えられない部分ってある。そこを短所と思わずに貫いていくことの大事さはいいなと思った」と、歳を重ねた世代だからこそリアルに共感を覚えたようだ。
世代の違いは埋められない。しかし理解しようとする姿勢や、自分の信念を曲げずに生きる姿は時代を超えても胸に響く。「ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場」は単なる軍隊映画ではなく、激しいスピーディーで変わり続ける世界の中で“変わらない人間”を描いた物語として、今なお観る価値のある一本だ。
■「ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場」ストーリー
祖国と軍隊を愛するハイウェー軍曹が、第2海兵隊偵察小隊に再入隊を志願してきた。朝鮮戦争、ベトナム戦争で華々しい戦功をたてた歴戦の勇者を駆り立てたもの、それは平時を生きられない戦う男の本能だった。そんな彼の入隊を司令部の将校たちは煙たがり、パワーズ少佐は彼に出来損ない揃いの小隊を任せる。そしてその日から、無責任な部下たちを一から叩き直すためのハイウェーによる過酷な訓練が始まる…。

