超がつくほどマジメな夫・ともあきとしあわせに暮らしている、ゆうか。しかし、仕事の接待のため、「ネットゲーム」を始めた ともあきは、どんどん常軌を逸していき…。
マジメな夫と理想的な結婚生活
まどの外に広がる夕暮れ時の空が、少しずつ濃い藍色に染まっていくのを、私はキッチンからながめていました。
十年前、職場で夫のともあきと出会ったとき、私は彼のその「マジメさ」に強く惹かれました。
3歳年上の彼は、常に背筋を伸ばし、仕事に対しても、一切の妥協をゆるさない人でした。出会って3年後に結婚し、やがて、娘の「みか」が生まれました。
私たちは、どこから見てもしあわせで、模範的な家庭を築いている…そう信じてうたがいませんでした。実際、本当にそうだったはずなのです。
「僕の人生は、本当につまらないものだった」
ともあきは、マジメを絵に描いたような人物です。学生時代は、学級委員長を任され、周囲からの信頼も厚かったと言います。
しかし、結婚してしばらくたったある夜、彼がふともらした言葉が、今も胸に残っています。
「僕の人生は、本当につまらないものだった」
彼の育った家庭は非常に厳格でした。
幼少期から分刻みのスケジュールで勉強を強いられ、友人と放課後に遊ぶことさえ、ゆるされなかったそうです。
親の顔色をうかがい、期待に応え続けることでしか、自分の居場所を確保できなかった彼…。
彼にとって「マジメ」とは、美徳ではなく、自分を縛り付ける呪縛だったのかもしれません。
そんな彼の歯車が狂い始めたのは、一年前のことです。
ともあきが勤める会社が、大手ゲーム会社と大規模な取引をすることになりました。彼は接待の話題作り…あるいは予習として、その会社が運営する"パソコン用オンラインゲーム"を始めました。

