マジメだからこそ、のめりこむ?
「仕事なんだ。少しはルールを理解しておかないと話が合わないから」
最初は、キーボード操作もおぼつかない様子で、困惑しながら画面に向かっていました。
私は、なれない分野で努力する夫をほほえましく思い、応援していました。しかし、それが地獄への入り口になるとは、当時の私は想像だにしていませんでした。
想定外だったのは、ともあきがそのゲームに、信じられないほどの情熱でハマってしまったことです。
そのゲームは、5人のプレイヤーでグループを組み、チャットで連携を取りながら冒険を進めるスタイルでした。
今まで、友人の少なかった彼にとって、その仮想空間は、現実世界よりもずっとあざやかで、心地よい居場所になってしまったのです。
気がつけば、彼は睡眠時間を3時間に削って、夜通しゲームに没頭し、休日は泥のように寝だめをするようになりました。
マジメさが、「執着」へ
幼稚園から帰った みかが、「パパ、遊ぼう」とかけ寄っても、彼はつかれ切った顔で、「あとでね」と、突き放すだけ…。
私が「ゲームはほどほどにね」と注意しても、「仕事のためだ。君には分からないよ」という言い訳をくり返すばかりでした。
彼は次第に、現実の生活を「ゲームを阻害するノイズ」として扱うようになりました。
食事中も、スマホでゲームの最新攻略情報を確認し、会話は上の空。かつての、誰よりも責任感の強かった夫の面影は、急速にうすれていきました。
私がどれほど言葉を尽くしても、彼の心には届きません。それどころか、彼は自分の正しさを主張するために、「これは、ビジネススキルの向上につながっている」とまで、言うようになりました。
マジメな人間が、一度、道をふみ外すと、そのマジメさが、そのまま「執着」へと変換されてしまう…。そのおそろしさを、私は肌で感じていました。

