友人の来訪で子どもたちの興奮が爆発し、階下の奥様が激昂して怒鳴り込んでくる。謝罪も届かず、激しく閉められたドア。限界を迎えた千鶴に、夫は引っ越しを提案して―――。
盛り上がる子どもたち。そして事件は起きた…
事件が起きたのは、俊也のお友達の海斗くん親子が家にきた日でした。いつもは人を家に呼ぶことはないのですが、この日はもともと公園で会う約束をしていたのに生憎の雨。それでも「遊びたい」という2人に困り果てて、家で一緒にDVDを見ることになったのです。
「DVDを見るなら、静かにしてくれるだろう」
そう思った私が間違っていました。お友達の海斗くんは一戸建て育ちの元気な男の子で、家にあがるなり目を輝かせておもちゃに向かって行ってしまいました。
「海斗くん、ここでは忍者の足で歩いてね」
私が何度注意しても、子どもたちのテンションは上がりきっています。
「わーい!新幹線だー!」
ドダダダダッ!と、おもちゃを持った2人が廊下を走ります。
「ダメ!止まって!」
私が注意しますが、2人は一緒に居られるのが楽しくて止まりません。寝室に駆け込んだ2人はベッドに向かってジャンプ。そこは騒音防止マットを敷いていない部屋で、明らかに階下に響く場所でした。
「もう限界!」激しい剣幕で怒鳴られる
最悪だ、と思った瞬間
【ピンポーン!ピンポーン!】
インターホンの音が鳴り響きます。ドアを開ける前から、怒りの波動が伝わってきました。立っていたのは下の奥様です。
「ちょっと、今何をなさっているの?」
「申し訳ございません…子どもの友達がきていて…静かにさせますので」
「ここは共同住宅なのよ?今日だけじゃない、毎日毎日、朝から晩までうるさくておかしくなりそうなのよ」
奥様の声は震えていました。これまでの我慢が、一気に決壊したような怒りが伝わります。
「本当に申し訳ございません。今すぐ止めさせます」
「あなたね、いつもそうやって謝るけど何もよくならないじゃないの、もういい加減にして!」
バンッ!と音を立てて閉められた玄関ドア。私は立ち尽くしていました。
部屋に戻ると、海斗くんとお母さんが気まずそうに立っていました。
「ごめんね、千鶴ちゃん。海斗がうるさくしちゃって……」
「……ううん、こんな状況なのにお呼びした私が悪いんだよ」

