イタリア世界遺産⑦:マテーラの洞窟住居「サッシ」地区
マテーラの景色(筆者撮影・井上はな)
日本人でマテーラという街を知っている人は、それほど多くはないかもしれません。マテーラはイタリア南部にあり、洞窟を掘って形成された街として世界遺産に登録されています。「サッシ」とはイタリア語で「石」を指す言葉で、マテーラの人々はこの地の石灰岩の山を削すことで住居を築きました。
マテーラの石灰岩は比較的柔らかく、加工しやすい性質があります。単純に掘りやすいだけではなく、耐熱性が高いため夏の暑さや冬の寒さに対応できる点もメリットです。外敵対策にも有効で、万が一土地勘のない人が近くを通ったとしても、見つかりにくく攻めにくい構造をしています。
マテーラに住み始めた大昔の人にとっては、ザクザクした山肌に家を建築するよりも、岩を彫ってスペースを作る方が合理的だったのでしょう。雰囲気としてはトルコのカッパドキアに少し似ているかもしれません。
実は、マテーラの歴史は決して美しい面ばかりではないと知っておくことも大切です。第二次世界大戦終戦後、マテーラは貧困と衛生状態の悪さから、人がほとんど住めないような場所になっていました。見かねたイタリア政府は、マテーラから住民を郊外に強制移住させたほどです。
1990年以降になると、マテーラの特殊性や歴史的価値が徐々に評価されるようになり、衛生面や生活環境の改善が進められました。現在では人気の観光地になっており、自然と人が共存する例としても注目されています。
芸術的な見どころとしては、岩に彫られた教会のなかに描かれたフレスコ画を見ることができるなど、「サッシ」の独特で神秘的な雰囲気を感じられます。ただの岩に見えても、実は教会!なんて、特別な景観を見られるのは、マテーラを訪れた人の特権でしょう。
まとめ:様々な街で世界遺産大国イタリアの美術を味わおう
イタリアに住んでいるとつくづく、「イタリア」という国に統一性を見出すのは難しい!と思ってしまいます。たとえばヴェネツィアとフィレンツェとローマは、それぞれまったく異なる景観をもっていて、そしてそのどれもが、唯一無二の美しさなのです。
ヴェネツィアだけを訪れた人が「イタリアに行った」と言えるでしょうか。もちろん定義は人それぞれですが、このあまりに多様な国を理解するためには、少なくとも3都市以上は訪問する必要がありそうです。
60以上の世界遺産があなたを待っていますよ。以上、イタリアの世界遺産7選でした!

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