子どもの頃の何気ない日常の風景が、大人になってから「実は親の愛情によって守られていたものだった」と気づく瞬間って、ありますよね。子どもの頃には分からなかった家族の事情や、大人の優しさ。今回は、筆者の友人のエピソードをご紹介します。
質素な食卓と母の言い訳
子どもの頃、わが家の食卓はいつも質素なものでした。
豆腐の煮物やもやし炒め、そして安い旬野菜ばかり。
育ち盛りの子が喜ぶハンバーグやステーキのごちそうが並ぶことなんて、ほとんどありません。
「たまにはお肉が食べたい!」とねだるたび、母は「ごめんね、お母さんは料理が下手だから、お肉を焦がしちゃいそうで苦手なの」と困ったように笑うだけで、それ以上は何も言いませんでした。
私はその言葉を信じて、ずっと「うちのお母さんは料理が下手なんだ」と思っていました。
押し入れから見つかった秘密の記録
真相を知ったのは、私が結婚後、母の引っ越しを手伝っていたときのことです。
古い押し入れの奥から、父がかつて抱えていた大きな借金の明細と、それを一円単位で返済し続けた母の家計簿が出てきました。
それは、私が小学生から高校生まで過ごした“わが家の裏側の記録”でした。
家計は常に火の車で、母は少ないお金で必死に生活費をやりくりしていたのです。
あの頃の質素な食卓は、料理が苦手だからではなく、“そうせざるを得なかった”結果だったのだと知り、言葉が出ませんでした。

