戸建てへの住み替えを決め、内見を進める千鶴たち。階下との関係は冷え込んでいましたが、千鶴の気持ちは前を向き始めていました。
夫が戸建てへの転居を提案
「ねえ、ここ、どうかな?」
篤郎が見せてくれたのは、郊外にある築浅の中古一戸建ての資料でした。 庭があって、隣の家とも適度な距離がある。何より、下に住人がいない。
「……高いんじゃない?」
「今のマンションを売れば、ローンは十分に組める。下の階の人に怯えて暮らすコストを考えたら、安いもんだよ」
私たちはすぐに動き出しました。
内覧と騒音対策を同時並行
週末ごとに不動産屋を巡り、篤郎が提案してくれた以外の物件も含めて何軒も見に出かけました。 一方で、マンションでの生活は細心の注意を払い続けました。廊下、リビング、さらにはトイレのドアの前まで、特厚のマットを敷き詰めたのです。
ネットで「菓子折りを持って謝罪に行くべきか」を再度調べましたが、結論は出ませんでした。今は、何をしても「火に油」な気がしたからです。
「お詫びは、引っ越す時にしよう。今までご迷惑をおかけした感謝と、お詫びを込めて。今は顔を合わせるだけでお互いストレスになる時期だと思うから」
篤郎の提案に、私は頷きました。

