口にしないのに察してくれないとキレる人の心理―"いい人"が感情爆発する「日本らしさ」の落とし穴|榎本博明

口にしないのに察してくれないとキレる人の心理―"いい人"が感情爆発する「日本らしさ」の落とし穴|榎本博明

高コンテクストの文化ゆえの感情爆発

このような甘え型の感情爆発は、日本特有のコミュニケーションのあり方を土台として発生する。

日本人の共感性の高さは、言葉にしない思いまでも察するという、日本特有のコミュニケーションによるものと言える。それは、遠回しな言い方、以心伝心、暗黙の了解、察し合いなどと言われる、言葉に頼らないコミュニケーションを可能にしている。

文化人類学者ホールは、意思の疎通を言葉に頼る文化と言葉に頼らない文化があることを指摘し、コンテクスト度(文脈度)という概念を提唱している。

コンテクスト度の低い文化とは、人々の間に共通の文化的文脈がなく、言葉ではっきり言わないと通じ合えない文化のことである。欧米のような言葉ではっきり伝えるコミュニケーションは、コンテクスト度が低い文化の特徴と言える。

一方、コンテクスト度の高い文化とは、人々が共通の文化的文脈をもち、わざわざ言葉で言わなくても通じ合う文化のことである。日本のようなはっきり言葉に出さないコミュニケーションは、コンテクスト度の高い文化の特徴ということになる。

私たち日本人は、とくに意識していないものの、ごく自然に高コンテクストのコミュニケーションを用いている。

以下の各項目が自分自身に当てはまるかどうか、ちょっと考えてみてほしい。

 

①相手の依頼や要求が受け入れがたいときも、はっきり断れず、遠回しな言い方で断ろうとする

②相手の意見やアイデアに賛成できないときも、はっきりとは反対しない

③はっきり言わずに、相手に汲み取ってほしいと思うことがある

④相手の出方を見ながら、自分の言い分を調節する方だ

⑤これ以上はっきり言わせないでほしい、察してほしいと思うことがある

⑥相手の期待や要求を察して、先回りして動くことがある

⑦相手の言葉から、言外の意図を探ろうとする方だ

⑧相手の気持ちを察することができる方だ

 

この8項目は、高コンテクストの文化におけるコミュニケーションを特徴づけるものであり、高コンテクストのコミュニケーションを自分が行っているかどうかを知るためのチェックリストとして、私が作成したものである。

当てはまる項目が多いほど、高コンテクストのコミュニケーションを習慣的に用いていることになる。

遠回しな言い方で断ろうとする。賛成できなくてもはっきりと反対しない。はっきり言わなくても汲み取ってほしい。相手の期待や要求を察して先回りして動く。

これらは低コンテクストのコミュニケーションを用いる欧米人などには、まったく意味不明であるに違いない。

一方、私たち日本人にとって、これらはごくふつうのことであり、ほとんどの項目が自分に当てはまるという人も少なくないのではないか。

このような高コンテクストのコミュニケーションに幼い頃から馴染んでいるせいで、私たち日本人の共感性は磨かれるのである。

配信元: 幻冬舎plus

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