
学校や地域からいなくなる、行方がわからなくなる子どもを「居所不明児童」という。彼らはさまざまな事情で戸籍がなかったり、学校に行けなかったり、住む場所がなかったりする。母親に捨てられ行き場を失った少年が、ホームレスの男性と生活する鈴木真澄さん(@ma_suzuki_mnyt)の漫画『空中くらげ』を紹介するとともに、著者に話を聞いた。





■母親に捨てられ、叔母には疎まれ…
奔放な母親に振り回され、湊(みなと)はいつも住む場所を転々としていた。母親が男と別れると、また次の住む場所を探さなくてはいけない。そのせいで湊は小学校もろくに行けず、周囲に頼れる大人も友達もいない。「次こそは」と安定した生活を始めたい母親は、息子を叔母のところに預けた。期間は1週間の約束だ。
しかし、叔母は仕方なく預かっただけ。鍵とお金を置いて湊を構うことはない。ヒステリックな叔母の態度に湊はうまくなじめず、日中は公園をフラフラとさまよった。そこで出会ったのが、仕事を失い公園で生活するホームレスの男性だった。
■ニュースで知った「消える子どもたち」
本作を描くきっかけについて、鈴木さんは「『居所不明児童』という言葉を知ったのが制作のきっかけでした。この日本で所在地のわからない、知られていない子どもがたくさんいるということに当時衝撃を受けました」と語る。
「テレビのニュースの特集でした。親が住民票を移さずに転居した場合など、住所地に居住実態がなくなると、官公庁も子どもの行方がわからなくなるとのことです」親の都合で振り回され、生活が安定しない子どもを救える手立てはないのだろうか。
■善意の保護か、それとも「誘拐」か
母親の迎えを心待ちにしていた湊。しかし、約束の1週間を過ぎても母親は現れない。湊は叔母の家を飛び出し、唯一の知り合いであるホームレスの男性のもとへ向かった。行き場を失った湊は、河川敷へ移動する男性の荷台にひっそりと乗り込む。
お互いに住むところがない者同士で言い争いを始めるが、通りがかりの通行人に「誘拐なんですか」と疑われ、居所不明児童とホームレスの奇妙な共同生活が始まった。
男性はリスクを背負いつつも、湊とともに1カ月半を過ごす。しかし、社会的に見ればそれは「ホームレスが少年を連れ回した誘拐事件」となり、2人は別々の人生を歩むことになる――。
■一度社会から外れることの重み
鈴木さんは物語の結末についてこう語る。「一旦社会生活から外れてしまうと、元に戻るのは大変だというのはその通りで、現実としては同じように立て直せるケースばかりではないとも思います。親子にしろ、おじさんにしろ、ラストで割愛した部分にそれぞれの踏ん張りがあるのだと思っています」
取材協力:鈴木真澄(@ma_suzuki_mnyt)
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