人身事故で電車が止まり、出社できない──。
誰にでも起こり得るこうしたトラブルですが、会社から「タクシーで出社するように」と指示された場合、その費用は誰が負担すべきなのでしょうか。
弁護士ドットコムには、タクシーで出社した人からの相談が寄せられています。
相談者は、勤務先へ向かう途中、利用していた電車が人身事故の影響で利用できなくなり、出社が遅れることを会社に連絡しました。
すると会社から、タクシーを利用して出社するよう指示を受けたといいます。定時には間に合わなかったものの、指示に従って出社しました。
ところがその後、会社からは「タクシー代は本人が負担すべきだ」と告げられました。社内規程には、非常時の交通費負担についての取り決めはないといいます。
業務のために会社の指示に従ったにもかかわらず、費用を自己負担しなければならないのでしょうか。森田梨沙弁護士に聞きました。
●「指示」ならタクシー代は会社負担
──今回のように、人身事故で電車が止まり、会社の指示でタクシーを使って出社した場合、タクシー代は誰が負担すべきなのでしょうか。
法律上、会社までの交通費は、原則として社員が負担します。
労働契約上、社員は会社に対して労務を提供する義務を負っており、その義務を果たすため、自ら会社に赴いて労務を提供できる状態にしておく必要があるからです。
ただし、実際には、多くの会社で、雇用契約書や社内規程により、通勤交通費を支給するという内容が定められているのではないでしょうか。
今回の会社のルールは不明ですが、たとえば「会社が最も経済的かつ合理的であると認めた通勤経路にかかる公共交通機関の実費についてはこれを支給する」といった定めがある場合、社員がこれに反して、独断でタクシーを利用したのであれば、会社が負担する理由はありません。
しかし、今回のように、会社から「タクシーで出社するように」と指示があった場合、社員は業務命令に基づいてタクシーを使用したことになります。この場合、タクシー代は会社が負担すべきと考えられます。
●タクシーを使わず、出社できなかったら?
──もし社員が、タクシーを使わずに出社できなかった場合、欠勤や遅刻として不利益な扱いを受けることは許されるのでしょうか。
会社からタクシーで出社するよう指示があったにもかかわらず、これに従わず、出社できなかった場合、業務命令違反にあたる可能性があります。
通常は口頭注意などで済むことも多いと考えられますが、正当な理由なく命令に従わず、しかも会社に損害を与えたような場合には、懲戒処分が検討される可能性も否定できません。
また、「ノーワーク・ノーペイ」の原則により、欠勤や遅刻した分の給与は、控除されるのが原則です。

