事例2:「役割夫婦から、ゆるい伴走者へ」変容した妻
直美さん(54歳、仮名)の夫は、岩手県盛岡市で単身赴任をしていました。子どもが独立したとき、直美さんはパートから正社員に転じ、生活の中心が「家庭」から「仕事と友人関係」へと移っていました。
ところが、夫が帰任して同居が再開した途端、「これからは二人の時間を大事にしような」と距離を詰めてきます。直美さんは、悪い気はしない一方で、長年一人で回してきた生活リズムを乱されたくないと感じ、「私はあなたの世話係に戻りたくない。仕事と友人を一番に考えたい」という本音をさらけだしました。もちろん口論になり、数カ月は夫ともめたといいます。
諦めずに話し合った末、二人が考え、合意したのは“ゆるい伴走”の形でした。
・生活費は一定額を共同口座へ
・家事は「できる方がやる」ではなく「担当制」
・平日の夜は基本「別行動」
・食事は余分に作ったら二人で食べる
・体調が悪いときは、助け合う
直美さんは「一緒に住んでも、昔みたいな愛あふれる時代に戻るのは難しい。でも、敵になる必要もない」と言います。彼女は卒婚という言葉は知りませんでしたが、卒婚の定義に当てはまると思いませんか。
私が考える卒婚は、「役割としての夫婦」を卒業し、「生活のパートナー」としてリラックスできる関係を再定義する“荒療治”のようなものだと思います。重要なのは「自然にそうなるもの」ではなく、合意とルールで成立する契約的な側面が強いという点です。生活費の分担、住まい、緊急時の連絡、親族行事の扱い、そして特に異性関係の線引き。ここを曖昧にすると、卒婚は夫婦の破綻に変質しやすいです。ルールを言語化できれば、夫婦は驚くほど安定します。
卒婚が気になったら、まずは“卒婚したい理由”を夫婦それぞれが語れるように整理してみてください。「自由が欲しい」だけでは交渉になりません。
・一人時間を確保したい
・仕事、学び、趣味を続けたい
・老後の病院や介護など、お金の不安は共有したい
・自分の交友関係を優先する日を持ちたい など
というように具体的に落とし込むと、相手も理解しやすくなります。
夫婦は白黒で決めなくていい。離婚か、我慢かの2択に疲れた大人のための“第3の道”として、卒婚はこれからも静かに残っていくと感じています。
