「春の香りって、どんな香り?」あなたは香りを言葉にできますか

「春の香りって、どんな香り?」あなたは香りを言葉にできますか

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

春の香り…どんな香り?言語化のすすめ

立春を過ぎると、お花屋さんの店先がますますカラフルになります。

花たちは(春が待ちきれない!)とわくわくしているような。

お花屋さんの店先、八百屋さんに並び始めた春野菜、山菜から春が始まる。まだ寒さは厳しいですが。

花屋の写真

春の花はその姿と同じく可憐な香りがします。

控えめでありながら、少女の無垢な眼差しのような。

ほのかな甘さの片隅に、存在の主張があるような、そんな香りたち。

ずいぶん前に、ハワイ、ホノルルから車で20分ほどの場所にあるマノアの森をひとりで歩いていたときのこと。

一瞬、ふっと鼻の先に甘いお香のようないい香りが。

天国ってこんな香りがするのかもしれない、と思ったことをよく覚えています。

天使が私の鼻先に香りの粉を撒いたような、そんな想像がふくらみました。

いろいろ迷っていた時期でもあったので、それは私を励ましてくれるギフトのようでした。

森の写真

香りをはじめ、五感を言葉で表現するのはなかなか難しいものです。

中でも特に香りは難しい。例えば『お香の香り』を表現する。

白檀の香りがする…白檀の香りはどんな香り?

と深めていくと、なかなか言葉にならない。

「秋の夕暮れ、京都の骨董屋さんの引き戸を開けたときの感じ」かなりの当てずっぽうの表現ですが、このように精油などの名前を出さずに表現してみる。

引き戸の写真

たとえば、ディオールの香水『プワゾン』。

今もあるのでしょうか、80年代、90年台の初めに流行った香水で、その名前の通り、どこか危険な香りのする、媚薬的なイメージの香水です。

言葉で表すなら、「森瑤子の小説を読みながら、思わずつけてしまう香り」、ずばり『誘惑』そのもの、でしょうか。

もちろん、言葉の表現は自由ですから、想像をめぐらせて遊んでみてください。

香水の写真

音楽大学の作詞の授業で、この『味を言葉で表現する』というワークをやりました。

カカオ70%というビターなチョコレートを配り、その味を言葉にしてもらいます。

記憶と結びつけての表現などなかなか興味深い表現がありました。

その中でひとつ、唸りたくなるようなエッジの効いた表現がありました。

「不穏な味がする」

この表現に、想像力が掻き立てられます。

『不穏』という言葉が持つムードが、ビターチョコレートの味の物語性を広げるような感じがしました。

チョコレートの写真

五感をあえて言葉にしてみる。自分の言葉、表現力を磨くだけでなく、想像力が広がっていきます。

それは世界の見え方が変わってくることにもつながります。

目に見えていることだけがすべてではなく、聞こえていることだけがすべてではない。

言葉にすることで、豊かな内的世界が広がっていく。

まずは春の香りから、言葉の世界で遊んでみてください。

作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー

※記事中の写真はすべてイメージ


[文/吉元由美 構成/grape編集部]

配信元: grape [グレイプ]

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