「別れてくれない」交際トラブルからストーカー被害に発展 まず踏み出すべき一歩とは

「別れてくれない」交際トラブルからストーカー被害に発展 まず踏み出すべき一歩とは

●被害者の命と加害者の人権を天秤にかけるのではなく

2013年の三鷹事件の後、社会の要請もあり、警察はストーカーに対して検挙を急ぐ方向に舵を切り、また2016年の法改正により警告の前置なしで禁止命令が出せるようになった。

「それでも警察としては、警察権の濫用とか、権力の肥大化と言われることに敏感な体質がありますので、自然と自制的になります」

警告や禁止命令の発令後に事件を起こすストーカーもいる。そのため、2016年4月から警察は単に禁止命令を出すだけでなく、その後もフォローを継続し、カウンセリングや医療を勧奨することにも取り組んできた。

しかし、警告や禁止命令を受けただけの加害者はまだ犯罪者ではない。一般人に対して警察がフォローを継続し、カウンセリングや医療を勧奨することは、加害者側に存在する人権への越境ではないと問題視をする向きもある。

「ですが、何より優先されるべきは人命です。『犯罪者未満』の加害者を犯罪者にしないために、警告はもとより禁止命令もしっかり出して警察の抑止力をかけ続けてほしいです。

そして、禁止命令を受けたストーカーの中でも特に衝動性が強く、行動制御能力に問題があると見受けられる一部の者に対しては、医療への勧奨ではなく、せめてプログラムの受講や精神保健福祉士等の医療情報を提供できる心理の専門家との面談を命じられるようにストーカー規制法の禁止命令の運用を見直していただけないものかと私は思います。

これには社会的合意が必要でしょう」

社会はストーカー事案とどう向き合うべきだろうか。

「被害者の命と加害者の人権が天秤にかけられることには反対です。人命優先のため、警察には早期の介入と加害者に対する強い抑止力を求めます。同時に、ごく一部の危険な加害者を医療に導入する方法を警察だけに頼るのが良いことなのか、どういった体制が必要なのか、社会は検討しなければならないと思います」

【プロフィール】小早川明子(こばやかわ・あきこ)カウンセラー。中央大学文学部哲学科卒業後、ゲシュタルト・セラピスト養成コース修了後、独立。1999年にストーカー対策組織を発足、翌年株式会社ヒューマニティを設立。2003年、NPO法人に組織変更。ストーカー規制法に関する警察庁の有識者検討会委員を2度にわたり務める。著書に「ストーカー 『普通の人』がなぜ豹変するのか 」(中公新書ラクレ)など。

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