毒蛇咬傷の前兆や初期症状について
初期症状とその後の症状は、咬まれたヘビの種類と毒液の注入量により異なります。症状の程度には個人差があり、アレルギー反応によるアナフィラキシーショックが起きる可能性もあります。
以下に、日本に生息する主な有毒ヘビの生態や特徴、咬まれた場合の症状について紹介します。
マムシによる毒蛇咬傷
マムシ(ニホンマムシ)は日本でもっともよく知られている毒ヘビです。ほぼ日本全土に生息する体長数十センチ程度の小型のヘビで、山林、藪、水辺などで見られます。春から秋の活動期には田畑で見かけることもあります。
マムシは積極的に毒を用いた狩りをしており、自己防衛で咬みついた対象にも毒液を注入します。移動せずに獲物を待ち伏せする習性を持ち、周囲の植物などと見分けのつきにくい見た目でもあることから、人間が気づかずに近づいたり、踏んだりして咬まれる事故が起きるとされています。
マムシの毒は出血毒が中心で、受傷部位を中心に強い痛みが出て腫れあがります。マムシの毒そのもので命を落とすケースは少ないとされますが、腎障害やアナフィラキシーショック等のリスクもあり、治療が遅れると危険です。手指などの末端を咬まれた場合、コンパートメント症候群により患部の壊死などを引き起こす可能性があります。
マムシによる毒蛇咬傷は国内ではもっとも報告例が多く、毎年約2,000〜3,000件発生しています。
ハブによる毒蛇咬傷
ハブの仲間は、沖縄、奄美地方でのみ見られる毒ヘビです。成体は体長2mほどになり、咬みついた対象に長い牙から毒液を注入します。
ハブは毒そのものの強さではマムシに及ばないとされますが、マムシの数倍以上とも言われる大量の毒液を注入するため、咬まれた場合の危険度はかなり高く、猛毒のヘビとして有名です。ただし、生息域が限られていることもあって、ハブによる毒蛇咬傷は年間100件程度と多くはありません。
積極的に人を襲うわけではないものの、威嚇目的で攻撃してくる性質があり、田畑や人家近くでも出没することから、沖縄では常に警戒されている毒ヘビです。
咬まれた場合は、30分ほどで受傷部位を中心に大きく腫れあがるのが特徴です。現代では抗毒素(血清)による治療が発達し、治療すれば死亡することはまれとされています。
ヤマカガシによる毒蛇咬傷
ヤマカガシは北海道や一部の離島を除き、日本全土に生息するヘビです。
体長は成体で1〜1.5mほどで、カエルなどを好んで捕食するため、活動期には水田や河川付近でよく目撃されます。
マムシなどと比べても非常におとなしい性格で、人間を見かけた場合は逃げ出してしまい、咬みつくことはまれとされています。そのため、ヤマカガシによる毒蛇咬傷の発生数は年間に多くても数件程度です。
さらに、口の前方に大型の牙を持ち毒液を注入するマムシやハブと異なり、ヤマカガシは口の奥にある小さな牙から毒を放出します。そのため、軽く咬まれただけで毒素が体内に入らないケースもあります。
ただし、ヤマカガシの毒は危険性の高い毒として知られています。咬まれた直後には顕著な症状はないことが多いですが、数時間から数日後になって脳出血や腎臓障害などを引き起こす恐れがあります。マムシのように痛みや腫れが強くないため、軽症と勘違いして治療が遅れてしまわないよう注意する必要があります。
毒蛇咬傷の検査・診断
日本国内で見られるマムシ・ハブ・ヤマカガシについては、抗毒素(血清)が開発されています。抗毒素は各毒ヘビにそれぞれ対応するものを用いる必要があるので、毒蛇咬傷の検査・診断では、ヘビの判別が重要です。
しかし、夜間や草むらでは、咬まれたのがヘビかどうかでさえ、患者自身が判断できないケースがあります。ヘビに咬まれたとの認識があっても、短時間でヘビの種類までを正確に判別するのは困難です。また、毒蛇咬傷による動揺から、患者が状況をうまく思い出せないケースなどもあります。
そのため、咬み跡の特徴や、さまざまな臨床的所見から毒蛇咬傷を疑う必要があります。
血液検査で凝固系(血小板・フィブリノゲン)をチェックすることも判別の重要な手掛かりとなることがあります。他に尿検査や腎機能の検査がおこなわれることもあります。
毒蛇咬傷では、アナフィラキシー(ショック)の兆候にも注意する必要があります。

