「刑務所に一生閉じ込めておけ」は思考停止? 女子高生コンクリ事件、加害少年の“その後”を知る意味

「刑務所に一生閉じ込めておけ」は思考停止? 女子高生コンクリ事件、加害少年の“その後”を知る意味

●より善く生きようと悪戦苦闘することは、被害者の痛みを和らげる

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──4人のうち、主犯のAを除く3人とは直接会って話をしています。なかでも準主犯格のBについては、出所後の2004年に知人を監禁・暴行した疑いで再び逮捕されたことをきっかけに、母親や義兄にも接触し、その人物像を浮かび上がらせていました。

彼と直接会ったのは、2004年に再犯で東京拘置所に勾留されていたときの一度きりですが、強い猜疑心を抱き、人を容易に信用しない印象でした。何を考えているのかわからない部分もありました。

背景には、長期間の獄中生活による拘禁反応や妄想的傾向があったのではないかと思います。家族との関係、暴力団とのつながり、さまざまな重荷に耐え切れなかった末の死だったのではないかと感じました。

彼の人生の責任は彼自身にあります。ただ一方で、そこに至る道筋の一部には、社会や周囲の大人たちの関わりもあったのではないかという思いもあります。事件前から、窃盗や女性の拉致、強姦などの行為を繰り返していて、暴力が常態化していた。もしかしたら周囲の大人の振る舞いを見て学び、感覚が麻痺していた可能性も否定できません。

──Bが2022年に孤独死したことを2025年1月に報じた際、ネット上では死を悼む声はほとんどなく、加害者が日常生活を送っていたことへの怒りが多く見られました。「加害者の死を知ったところで、何の慰めにもならない」という意見もありました。それでも、彼の人生を伝える意義はあったと思いますか。

取材とは、人のプライバシーに深く踏み込む行為です。それでも報じるのは、そこにある問題を社会と共有し、より良い方向へ進むための材料になると信じているからです。加害者に対して「許せない」というネガティブな印象を持つのは、自然なことだと思います。ただ、「死んで当然」「一生刑務所に閉じ込めておけばいい」と思考停止してしまうことには疑問があります。

死刑判決や無期懲役でない限り、一生刑務所に閉じ込めておくのは不可能で、加害者はいずれ社会に戻ってきます。そのとき再び罪を犯せば、最も深く傷つくのは、前の事件の被害者や遺族です。取材を通じて、罪を犯した人がより善く生きようと悪戦苦闘することは、被害者の痛みを和らげる一因になり得ると知りました。

また、刑期を終えた人が、いつ自分の隣人になるかはわかりません。そのとき、まったく反省も更生もしていない人が隣に来るのと、更生し社会に貢献しようとする人が来るのとでは、どちらが望ましいでしょうか。そうした問いでもあると思います。

●誰かを排除することで、最終的には自分も排除される

──あまりに残虐な暴行内容だったことから、少年であっても厳罰に処すべきだ、親が責任を負うべきだという自己責任論が強まりました。近年は、死刑執行の迅速化や無期懲役の終身化を求める声など、処罰感情が一段と強くなっていると感じます。

「自己責任」という言葉が広く使われるようになったのは、2004年のイラク邦人人質事件で、政治家が口にしたことが一つの契機でした。それ以降、周囲と異なる行動をして失敗した人を切り捨てる風潮が強くなったように思います。

「他人に迷惑かけるな」とよく言いますが、迷惑を一切かけずに生きることはできない。行儀よく振る舞える人だけが権利を行使でき、そうでもない人は排除されるのは、市民社会として健全ではありません。

誰かを排除する論理は、突き詰めれば最終的に自分自身が排除されることにつながります。その恐怖に怯えるのではなく、共感しにくい人とも共に生きられる寛容さがあってこそ、誰もが生きやすい社会になる。そのためには、加害者がどのような背景で育ち、なぜ事件を起こしたか、何が不足していたのかを考える機会を持つことが不可欠だと思います。

──事件から40年近く経ち、リアルタイムで知らない世代も増えました。この本をどのような人に読んでほしいですか。

事件を知らない人や、加害者の更生について考えたい人に読んでいただきたいのはもちろんですが、「こんな野獣のような連中」と断罪して加害者の人生を知ること自体を拒否している人にも手に取ってほしいと思います。殺人事件の加害者と接する機会は多くありません。彼らの生き方を通じて、犯罪を減らすために何が必要なのかを考えるきっかけになれば幸いです。

ただし、彼らを擁護するための本ではありません。「家庭環境が悪かったから大変だったんだ」と言いたいわけでもない。犯罪被害者の中には、矯正教育に力を注ぐ人もいます。それは、これ以上悲しい思いをする人を生まないためであり、再犯をさせてはいけないという思いがあるからです。

マスメディアが被害者や加害者の双方を取材し、事実に基づいた調査報道を重ねることで、誰もが「より善く生きる」ことを考えるきっかけになればと願っています。

【プロフィール】山﨑裕侍/やまざき・ゆうじ
1971年北海道生まれ。大学卒業後、東京の制作会社に入社。テレビ朝日「ニュースステーション」「報道ステーション」のディレクターとして、犯罪被害者や死刑制度などを取材した。2006年HBC北海道放送に中途入社。警察・政治キャップ、統括編集長、報道部デスクを務めた。2026年1月に『償い 綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件 6人の加害少年を追って』(文藝春秋)を上梓した。

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