甲状腺がんは男性よりも女性に多く発症することが知られており、その比率は約3〜4対1とされています。特に30〜50代の女性での発症が目立ちます。なぜ女性に多いのか、ホルモンの影響や遺伝的要因、環境因子など考えられる背景について詳しく見ていきましょう。

監修医師:
上田 洋行(医師)
大阪大学医学部卒業
住友病院、大阪大学医学部附属病院にて勤務
専門は糖尿病・内分泌・代謝内科
【資格】
・日本専門医機構認定内科専門医
・日本糖尿病学会糖尿病専門医
・内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医
女性に甲状腺がんが多い理由
甲状腺がんは、男性よりも女性に多く発症することが知られています。その比率は約3〜4対1とされ、特に30〜50代の女性での発症が目立ちます。女性に多い背景について考えられる要因を説明します。
ホルモンの影響と甲状腺機能
女性ホルモンのエストロゲンが、甲状腺がんの発症に関与している可能性が研究されています。エストロゲンは甲状腺の細胞増殖に影響を与えることが実験的に示されており、女性の方ががん化のリスクが高まる可能性があります。ただし、この関連性については、まだ十分に解明されていない部分もあります。
妊娠や出産、授乳といったライフイベントにおいても、甲状腺の負担が増大します。妊娠中は胎児の甲状腺ホルモン需要を満たすため、母体の甲状腺は通常より多くのホルモンを分泌します。この負荷が甲状腺細胞の変化を促進する可能性が指摘されています。
甲状腺疾患全般が女性に多いことも関係している可能性があります。橋本病やバセドウ病といった自己免疫性甲状腺疾患は、圧倒的に女性に多く見られます。慢性的な甲状腺の炎症や刺激が、がん化のリスクを高める可能性も考えられています。ただし、これらの関連性については、さらなる研究が必要とされています。
遺伝的要因と環境因子
遺伝的な要因も、性差に関与している可能性があります。一部の甲状腺がんは家族性に発症することが知られており、特定の遺伝子変異が関与しています。これらの遺伝子変異の中には、性別によって発現や影響が異なるものもある可能性があります。
放射線被曝は甲状腺がんの明確なリスク因子ですが、若年期の被曝では女性の方が影響を受けやすいことが報告されています。チェルノブイリ原発事故後の調査でも、小児期に被曝した女性での甲状腺がん発症率が高いことが示されました。
社会的要因として、女性の方が健康診断や医療機関受診の機会が多いことも、発見率の高さにつながっている可能性があります。婦人科検診や乳がん検診などで医療機関を訪れる機会が多く、その際に甲状腺の異常が見つかることもあるでしょう。ただし、これらの要因が実際の発症率にどの程度影響しているかは、明確には分かっていません。
まとめ
甲状腺がんは、早期に発見し適切な治療を受けることで、多くの方が良好な予後を得られる疾患です。症状が少ないため見逃されやすい一方で、定期的な健診や自己チェックにより早期発見が可能です。
特に女性では発症率が高く、ライフステージに応じた注意が必要でしょう。首にしこりを感じたり、声の変化が続いたりする場合は、早めに内科や耳鼻咽喉科、内分泌外来などを受診することをおすすめします。
分化型甲状腺がん、特に乳頭がんは進行が緩やかで、適切な治療により長期的な管理が可能な場合が多いとされています。ただし、個々の状況により経過は異なるため、専門医による適切な診断と治療計画が重要です。
生存率は全体として高い水準にありますが、年齢、病期、組織型などの要因により変動します。未分化がんや進行した髄様がんでは予後が厳しい場合もあるため、早期発見の重要性は変わりません。
甲状腺がんに関する不安や疑問がある場合は、専門医に相談することで、個々の状況に応じた適切な情報とサポートを得ることができます。定期的な検査と自己チェックを習慣化し、早期発見・早期治療につなげることが、安心して日常生活を続けるための第一歩となります。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「甲状腺がん」
日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」
厚生労働省「がん対策情報」

