お笑いを手話へ昇華する難しさと意外なこだわり
――ダンスの時と同様に、教室や講習会などには通わなかったのですね。きくち:そうなんですよ。でもその代わり、ろうの友達がまた別の方を紹介してくださったりして、どんどん知り合いの輪が広がっていったんです。実は手話って個人で結構クセがあるので、いろんな方にお会いすることで読み取りの勉強にもなりました。基礎はテキストやYouTube、実践は飲みに行くことで学んでいます(笑)。
――格闘技でいえば、まさにストリートファイト的な。
きくち:実践、実践の、完全な野良ですね(笑)。ただ、手話をお笑いに昇華することは、普通にネタをやるのとはまた違いました。言い方や声色で笑わせる手法が通じませんから。目で見て理解できるようにしたり、話の流れの中でボケたりツッコんだりしないと笑いは起きない。
これまで漫才で培った表現力以上に、より伝えることを突き詰めないといけないわけです。今までやってきたお笑いよりもできることの幅は狭くなったけれど、その分だけ奥行きが深くなったような気がしています。
――ダンスに手話、きくちさんは何事に対してもアグレッシブで努力家ですよね。
きくち:それ、よく言われるんですが、僕自身はその感覚が全然ないんです。でも、そういえば最近プライベートで料理をよくしていて。パスタが美味しいと言われているお店を巡りまくって、好みの濃厚さを突き詰め、結果的に自分の理想のカルボナーラを作り上げました(笑)。
――やっぱり野良で覚えていますね(笑)。
きくち:結局、その瞬間、瞬間の感覚で動いているだけなんだと思います(笑)。
全都道府県の人たちが笑える舞台と「手話通訳士」への挑戦
――「よしもと手話ブ!」の活動のやりがいはどこにありますか?きくち:僕らのライブは、手話と喋りを同時にやっているんです。ろうの方と聴者の方が、同時に「面白い!」となれる瞬間がある。それがすごく嬉しいし、モチベーションに繋がっています。これからは『よしもと手話ブ!』を全国的にもっと認知してもらって、全都道府県の人たちが一斉に笑える舞台を作りたいですね。
あと僕、ろう者の芸人がいてもいいなと思うんですよ。手話は使っても使わなくてもよくて、例えば沈黙の中でフリップだけで爆笑を生み出すような。そういう新しい芸人が出てきても面白いと思います。
――きくちさん自身の今後の目標を教えてください。
きくち:2026年は幅広く自分を試しつつ、手話関係では「手話通訳士」の資格を取りたいと思っています。手話ブ!に通訳士が2人いるという状態も強いじゃないですか。倍率が高く、合格率も低い試験(編集注:令和6年度の合格率は5.5%)ですが、持っているのと持っていないのとでは信頼度がだいぶ違いますから。改めて手話に向き合い、学び直す良い機会になると思っています!
<取材・文&撮影/もちづき千代子>
【もちづき千代子】
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:@kyan__tama

