中皮腫は、アスベスト曝露が主な原因のがんです。
肺や心臓など胸部の臓器や、胃腸・肝臓を包む薄い膜をそれぞれ胸膜、腹膜と呼びます。この膜に存在する中皮という細胞ががんになったものを総称して中皮腫と呼びます。
中皮腫のうち、悪性胸膜中皮腫が約90%、悪性腹膜中皮腫が約10%で、その他ごくまれに心膜や精巣の表面から生じるタイプがあります。
本記事では、最も多い悪性胸膜中皮腫について、余命に関する指標や治療法別の生存率などを詳しく解説します。

監修医師:
福田 滉仁(医師)
京都府立医科大学医学部医学科卒業。初期研修修了後、総合病院で呼吸器領域を中心に内科診療に従事し、呼吸器専門医および総合内科専門医を取得。さらに、胸部悪性腫瘍をはじめとする多様ながんの診療経験を積み、がん薬物療法専門医資格も取得している。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本呼吸器気管支鏡学会気管支鏡専門医。
がんにおける余命の代表的な指標

中皮腫に限らず、がんの余命(予後)を示す指標として、生存率・生存期間中央値・全生存期間をよく使います。これらは患者さんのデータを統計に基づいて計算した値で、治療の効果や余命の目安を示す重要な指標です。
生存率
がんと診断されてから、もしくは治療を開始してから一定期間後に生存している確率のことを指します。5年生存率がよく用いられています。
中央生存期間
中央値とは、データを小さい順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る値です。生存期間中央値とは、治療を開始してから、治療を受けたある集団のなかで生存している方の割合が丁度半分になるまでの期間をいいます。
全生存期間
全生存期間とは一般的に、診断日や治療開始日から数えて患者さんが亡くなるまでの期間のことを示します。
中皮腫全体の余命

中皮腫の予後は診断された病期(ステージ)、組織型、治療法によって大きく左右されます。ここでは、ステージによる違いを解説します。
中皮腫のステージはI期(ステージ1)からIV期(ステージ4)までに分類され、IV期が最も進行した状態です。ステージが進むに連れて予後が悪いことがわかっており、5年生存率はそれぞれ、Ⅰ期25.0%、Ⅱ期22.2%、Ⅲ期5.9%、Ⅳ期6.1%と報告されています。しかし、新しい治療法の登場などによって、最近では徐々に生存率が改善しています。

