立て替えた代金のことを言い出せず…
「……わかった。じゃあ、買ってから行くね」
結局、私はことわる勇気が持てず、カレー屋に立ち寄りました。
自分たちの分、そして、綾さん親子の分…。合計で3500円ほどの出費です。サイフから、千円札が消えていくのを見ながら、私は今日、「何も持っていかない」と決めた自分を、笑わずにはいられませんでした。
結局、こうなってしまっているのですから。
綾さんの家に着くと、部屋にはスパイスの香りが広がり、綾さんと子どもたちは歓声を上げました。
「わあ、おいしそう!るいさん、ありがとう!やっぱり、ここのカレーは最高だね〜」
綾さんは、手際よくテーブルをセッティングし、私が買ってきたカレーを並べます。
食事中、彼女は、幼稚園の先生のうわさ話や、美容の話で盛り上がっていました。その様子は、あまりにも自然で、「代金を立て替えてもらっている」という意識が、微塵(みじん)も感じられません。
結局、その日、手土産を持っていかなかったことや、おいしそうにカレーをほおばる、あやさんや子どもたちを前に、清算のことを言い出せませんでした。
モヤモヤの相談先は、たよれる夫
帰宅した私は、玄関に座り込んだまま動けませんでした。
「どうしたの、そんな暗い顔して」
リビングから、夫が出てきました。
私はたまっていた思いを、堰を切ったように夫にぶつけました。差し入れのこと、カレーのこと…そして、彼女の無神経なふるまいのこと。
夫は最後まで話を聞くと、真剣な表情で私を見つめました。
「数千円のことかもしれないけど、るいがそれで苦しんでいるなら、それは大金と同じだ。それは、後になってから言っても、もめるだけだよ。その場で、きっちり請求しなさい。友だちならなおさらだ」
夫の言葉は正論でした。
私は、自分の弱さが、彼女の甘えを助長させていたことに気づき、次は必ず「NO」を言う…あるいは、「お金を返して」と言うことを、自分自身に…そして、夫に誓ったのです。

