「バレないと思った」老人ホームで35人分を無断投票、不在者投票の悪用で有罪判決…大阪地裁

「バレないと思った」老人ホームで35人分を無断投票、不在者投票の悪用で有罪判決…大阪地裁

自民党の圧勝となった2月8日投開票の衆院選。その陰で、候補者ポスターの剥がしや落書きといった違反が一部報じられていた。

だが、選挙の公正そのものを揺るがしかねない、より深刻な不正が約半年前に起きていたことは、ほとんど知られていない。昨年7月の参院選で、35人分もの投票用紙が無断で使われていたのだ。

大阪地裁は2月6日、公職選挙法違反で起訴された30代の男性被告人に拘禁刑1年6カ月、執行猶予5年の判決を言い渡した。被告人は、老人ホームの入居者らの不在者投票を不正に処理していた。

裁判で明らかになった手口は驚くほど単純で、「同じことが他でも起きていないか」という不安を抱かせるに十分な内容だった。(裁判ライター・普通)

●驚くべき選挙偽造の犯行内容

起訴状によると、被告人は当時、責任者として管理していた大阪府内の有料老人ホーム2カ所で、部下らと共謀のうえ、昨年7月の参院選において不在者投票制度を利用し、入居者計35人分の投票用紙に無断で特定候補の名前を記入したとされる。

不在者投票制度とは、病院や老人ホームなどに入院・入所している人が、投票所に行けない場合でも、施設内で投票できるようにするものだ。

検察官の冒頭陳述などによると、被告人は事件の前年にこの老人ホームに就職し、複数施設を統括するエリアマネージャーをつとめていた。運営会社は特定候補を応援しており、ポスターやパンフレットを配布していたという。

会社から自治体への不在者投票施設の申請を指示されて、制度の説明を受ける中で、選挙管理委員会が投票に立ち会わないことを知り、「不正をしてもバレないのではないか」と考えるようになったようだ。

そして直属の担当者と共謀し、認知症などで意思表示が難しい入居者を選び、その人数分の投票用紙に会社が推す候補者の名前を記入した。なお、こうした不正の指示が会社から出ていた事実は認められていない。

事件は、ある入居者が自ら投票所に行こうとした際、すでに不在者投票が済んでいると告げられ、家族に相談したことから発覚した。被告人は起訴内容を認めている。

●「当選させなきゃいけないのかな…」

弁護人の被告人質問では、“政治”との関わりが問われた。これまでの選挙活動や特定の宗教との関係について、被告人はいずれも否定した。

会社が応援している候補者がいて、不在者投票の説明を受ける中で、「不正をしてもバレないのではないか」「当選させなきゃいけないのかな」と思ったという。

弁護人:会社から悪用しろと指示されたり、それを匂わせるようなことは?
被告人:ありませんでした。

弁護人:出世したいと思い、会社の意向に忖度したという思いは?
被告人:そうではありません。選挙の翌月には転職先も決まっていたので。

弁護人:ではどうして?
被告人:会社が応援している人がいて、不在者投票の話もあったので、当選させなきゃいけないのかなと思い…。

あくまで自分で判断したという。検察官はこの経緯を「突飛な行動」などと評した。

提供元

プロフィール画像

弁護士ドットコム

「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。