職場でバレンタインチョコを配らないだけで、「気が利かない人」だと思われている気がしてつらい──。
既婚の女の会社員から、こんな悩みが弁護士ドットコムに寄せられました。バレンタインデーについては、夫が嫌がることや、相手にお返しの負担をかけたくないとの思いから、職場ではチョコを渡さないようにしているとのこと。
それでも、同僚の女性が男性社員にチョコを配る様子を見るたびに、「自分だけ浮いているのではないか」「評価を下げているのではないか」と落ち込んでしまうそうです。既婚者同士でチョコをやり取りする光景に違和感を覚えることもあるといいます。
また、この女性は「チョコ配りがセクハラになったりしないのか」と疑問に思っているようです。
こうした“義理チョコ文化”は、職場の人間関係に微妙な緊張を生み、場合によってはセクハラなどと受け取られるリスクもあります。
バレンタインのやり取りはどこまで許されるのか。職場としてルールを設ける必要はないのか。寺林智栄弁護士に聞きました。
●チョコの受け取りを強要すればセクハラになる可能性
──職場でのチョコのやり取りは、セクハラなどの法的問題に発展する可能性はあるのでしょうか。
状況によっては、セクハラなどの法的問題に発展する可能性はあります。
たとえば、相手が明確に受け取りを望んでいないにもかかわらず、個人的な好意を強調してチョコを渡したり、受け取ることを事実上強制したりする行為は、「性的な意味合いを含む言動」と評価され、セクハラに該当するおそれがあります。
また、特定の人にだけチョコを配ることで職場内に不公平感や疎外感を生じさせたり、見返りを期待する発言を伴ったりする場合も、職場環境を害する行為として問題となり得ます。
さらに、上司から部下へのチョコの配布や受領の強要は、優越的な関係を背景としたハラスメントと評価されやすく、会社は職場環境配慮義務違反が問われる可能性もあります。
●「チョコを配らなければならない」同調圧力も
──「チョコを配らなければならない」といった空気が職場にあった場合、その同調圧力や断りづらさはハラスメントになるのでしょうか。
ハラスメントに該当する可能性はあります。
明確な強要や命令がなくても、慣習や暗黙の了解として参加を求められ、断ることで不利益を受けたり、周囲からの評価が下がるような状況に置かれれば、心理的圧迫を与える行為として問題となり得ます。
とりわけ、バレンタインのように私的・任意性の高い行事について、個人の価値観や経済的事情、信条を無視して事実上の参加を求めることは、職場環境を悪化させる要因になりかねません。
このような同調圧力は、パワーハラスメントや職場環境型ハラスメントと評価される余地があり、企業には不要な慣習を見直し、「参加しない選択」も尊重される職場づくりが求められます。

