高齢の方が入居する介護施設では、転倒や誤薬などさまざまなトラブルが発生することがあります。介護スタッフは細心の注意を払っていますが、残念ながらリスクをゼロにすることは困難であり、事故が起きる可能性は常に存在します。本記事では、介護施設で起きやすいトラブルや事故の具体例とその予防策、万一発生してしまった際の適切な対処法について解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
介護施設で起きやすいトラブルや事故

介護施設ではどのようなトラブルが起きやすいですか?
介護施設で起こりうるトラブルはさまざまですが、誤薬と転倒や転落は起こりやすいトラブルの一つです。誤薬とは服薬時間や投薬量や相手を間違える間違いの総称です。また、高齢の方の転倒と転落も重大事故の代表例で、骨折や打撲など怪我につながるケースもあります。
そのほかにも誤嚥による窒息、入浴中の事故、車椅子やベッドからの転落、ドアや機械への挟み込み、さらには入居者同士のトラブルや職員の対応を巡るトラブルなど、介護施設では多様な問題が起こりえます。いずれも高齢の方の心身機能の低下や認知症の影響などで起こりやすく、スタッフの注意を払っていても完全には防ぎきれないのが現状です。
介護施設で発生しやすい事故を教えてください
転倒や転落事故が介護施設では起こりやすい事故の一つです。立ち上がりや歩行時のバランス崩れ、ベッドからの起き上がり、車椅子への移乗など日常の動作中に転倒し骨折などの大怪我につながるケースがあります。
また、誤嚥による事故も、食事形態の工夫や見守りで対策していますが高齢の方は嚥下機能が低下しているため起こりうる可能性は常にあります。
さらに、認知症の入居者の場合、自分の薬ではない他人の薬を飲んでしまう、食事以外の異物をお口に入れてしまう異食などの事故も起こりえます。入浴中の溺水や低温火傷、送迎中の交通事故や乗降時の転倒、エレベーターや自動ドアなどの挟み込み事故なども起こりえます。このように、介護施設では生活上のあらゆる場面に事故リスクが潜んでおり、施設もマニュアル整備や安全設備導入など多面的な対策を講じています。
介護施設の種類によって起きやすいトラブルや事故に差はありますか?
はい、施設の種別や利用形態によって起きやすい事故の種類や頻度に違いがみられます。例えば、入所型の特別養護老人ホーム(特養)や有料老人ホームなどでは、居室内や廊下での転倒、ベッドや椅子からの転落や滑落事故が起こりえます。長時間を施設内で過ごす入居施設ではそれだけ事故リスクが高くなります。
一方、通所系サービス(デイサービス)では、例えば自宅と施設の送迎時の事故や入浴介助中の事故、レクリエーション中の転倒などが起こりえます。また、デイサービスは利用者が毎日入れ替わるため、スタッフが把握しきれない体調変化による急な容体悪化などのトラブルも起こりえます。
認知症グループホームのような認知症高齢者対象の施設では、徘徊や異食、入居者同士のトラブルが起こることもあります。このように施設の種類や規模、入居者層によって事故の発生傾向には違いがありますので、家族は入所先の特色に応じたリスクを把握しておくことが大切です。
介護施設でのトラブルや事故に関する統計はありますか?
はい、介護施設で発生する事故については統計データがあります。例えば、全国の事例276件の分析から事故内容の内訳は転倒・転落・滑落が65.6%、誤嚥・誤飲・むせが13.0%、不明が12.0%、送迎中の交通事故が2.5%、ドアなどへの挟み込みが0.7%、盗食や異食が0.4%、そのほかが5.8%という割合でした。このように統計から、転倒・転落および誤薬・誤嚥関連のトラブルが介護現場で起こりやすいことがわかります。施設選びや安全対策の検討に、これら客観データを参考にすることも有用でしょう。
参照:『「介護サービスの利用に係る 事故の防止に関する調査研究事業」 報告書』(公益財団法人 介護労働安定センター)
介護施設でのトラブルや事故を事前に防ぐ方法

介護施設でのトラブルを予防する方法を教えてください
介護施設側ではさまざまな事故防止策が講じられています。まず基本となるのは職員への教育や研修です。定期的に研修を行いヒヤリハット事例を共有したり、介護技術や認知症ケアについて職員の知識を高めたりすることでヒューマンエラーを減らします。特に、誤薬防止には複数職員による投薬ダブルチェックや、投薬管理システムの導入などが有効です。また、業務手順の見直しやマニュアル整備も重要です。過去の事故を分析してリスク要因を洗い出し、チェックリストの活用や二重確認体制の構築など仕組み面でミスを起こしにくい環境を整えます。
一方、利用者側でできる予防策としては健康状態の情報提供があります。家族が利用者の体調変化や生活上の注意点を施設に伝えておくことで、施設側がリスクを予見して対策を講じやすくなります。このような対策を組み合わせ、家族も含めた情報共有でリスクに先手を打つことがトラブルの予防には重要です。
事故が起きやすい介護施設を見分ける方法はありますか?
介護施設のリスクを見極めるには、施設の方針と運営体制、施設の環境、職員の様子を多角的に確認することが重要です。まず、施設見学や問い合わせの際に、事故防止の取り組みについて具体的に説明できるかを確認しましょう。抽象的な回答しか得られない場合は注意が必要です。
次に、施設の環境として、プライバシーや尊厳に配慮した居室やトイレの設備、転倒防止の手すりやナースコールなどの安全設備の充実度を確認します。見守りやすさを優先しすぎ、プライバシーを軽視している施設は要注意です。さらに、契約前の重要事項説明書で苦情相談窓口や事故発生時の対応が明記されているか確認しましょう。
施設側の安全管理意識や設備面の充実などを確認することで、事故リスクの高い施設かどうかを見極める助けとなります。

