●恐喝と傷害、どちらも成立すると罪の重さはどうなる?
上で挙げたいずれの事案も、暴行でけがを負わせているため傷害罪も成立しており、恐喝罪と傷害罪の併合罪(刑法45条前段)となっています。
お金などを奪うための暴行によってけがを負わせた場合、強盗とされたか恐喝とされたかで扱いが大きく変わります。
強盗とされた場合には、けがは強盗の暴行から生じたものとして評価され、強盗致傷罪(刑法240条)が成立します。刑は無期または6年以上の拘禁刑となり、非常に重くなります。
一方、恐喝とされた場合には、恐喝罪と傷害罪の両方が成立し、併合罪として処断されます。
併合罪となった場合、複数の罪を合わせて一つの刑を定めますが、それぞれの罪の刑を単純に足し合わせるわけではありません。
刑法47条では、併合罪のうち二個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする、と定められています(「併合罪加重(へいごうざいかじゅう)」といいます)。
恐喝罪は10年以下の拘禁刑、傷害罪は15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。重いほうの罪の刑を基準に、その長期に2分の1を加えた範囲内で、一つの刑が言い渡されます。
つまり、15年の1.5倍である22年6カ月までの範囲内で刑が言い渡される可能性があることになります。
●本件では「強盗」にならないのか
では、本件ではどうでしょうか。具体的な事情がはっきりしないため、最終的には強盗罪として起訴されたり、有罪判決が下される可能性もあります(もちろん、まだ逮捕されたという段階に過ぎませんので、不起訴となる可能性もあります)。
ただ、最初に書いたとおり、報道で明らかになった事情だけで考えるのであれば、上の裁判例との比較でいえば恐喝罪にとどまる可能性が高いように思われます。
なお、「金をおろしてこい」という言葉から、男性がその場に持っていた現金ではなく、ATMなどでおろしてきた3万円を渡した可能性も考えられます。
暴行・脅迫と金の交付に時間的・場所的な間隔がある場合、その間に逃げたり通報したりすることも可能と考えられることから、「反抗を抑圧」といえなくなり、強盗罪の成立が認められにくくなるといえます。
結局、現時点では、暴行の態様や負傷結果、店舗の状況などから、「反抗を抑圧するに足りる程度」という立証までは難しそうだと捜査機関が判断し、強盗ではなく恐喝の疑いで逮捕したものと考えられます。

