歌舞伎町が面白くなるのは午前1時から
19時~午前1時頃までは、たくさんの人で歌舞伎町はごった返す。雰囲気はどこの繁華街も変わらないだろう。その人数が多いと思ってくれればわかりやすい。週末は祭りのように人でごった返す。歌舞伎町が際立って面白いのは午前1時からだ。ほとんどのキャバクラやホストクラブは法令遵守で午前1時に営業を終了する。24時頃にどこのお店もピークを迎え、午前1時の熱狂真っ只中に強制終了して店の外に一気に放出される。
お客様たちは余韻に浸りながら街を回遊する。飲みに行ったホストクラブやキャバクラでアフターを取りつけている人は行き先が決まっている。しかしたいがいのホストやキャバ嬢は「後で連絡する」という曖昧な返答をする。みな一旦、お客様をすべて帰した後、店で一息ついてから考えるのだ。さて誰とアフターしようかなーと。もしくは数軒アフターを回るならば、どこから回ろうかなーと作戦を立てる。お客様側はどこにいるのがベストか? を考えて連絡を待ちながら街を徘徊する。熱狂冷めやらない延長戦を求む欲望の塊が街を彷徨う。陽気で浮足立っていて眺めているだけで幸せな気持ちになる。
この時間は「陽」の時間だ。期待が蠢うごめいている。そう、水商売とは期待させる職業だ。期待に応える職業ではない。遠足に行く前日を作るようなものだ。
期待は、良くも悪くも裏切られる。期待通りにいくことなんてほとんどない。欲望は次から次へと欲望を生む。満たされることは永遠にない。アフターにホストやキャバ嬢が来てくれたとしたら、その先を求めてしまう。サクッと小一時間のアフターをこなして帰るのが綺麗な遊び方だし、ホストやキャバ嬢にとっても上手な仕事だろう。だが、そんな器用な人間は歌舞伎町には少ない。夜も深くなればなるほど、何が目的かもわからないまま時間は過ぎていき、お互いドツボにはまっていく。
この時間は「陰」の時間だ。意識も朦朧としてくる。お持ち帰りの攻防戦に敗れたおじさんたちは再び街を徘徊する。やけくそにキャッチされるがままに朝までやっているキャバクラに再び吸い込まれていく。ホストとお客様も路上で言い合う。疲れ果てた新人ホストたちが徒党を組んで近隣の寮に帰って行く。揉め事が起きるのもだいたいこの時間だ。
酔っ払いたちが試合終了に向かうとき
午前4時頃になると、もう酔っ払い祭りだ。男と女の攻防戦など意に介さない酔っ払いたちの饗宴の時間だ。ほとんどの人が覚えていないんじゃないかという泥酔祭りだ。この時間まで飲み続けると、もはやどうでもいい。先に帰った奴が意気地なしと見なされるチキンレースがそこかしこで繰り広げられる。
週刊誌などに載せられる酒池肉林の風景は、この祭りの終焉を迎えた意識朦朧の人々の試合終了直前の姿だ。中には12時間以上飲み続けている人もいるだろう。酒のせいで自己陶酔しすぎて周りなんて見えていないし、自分も周りを気にしない。自らが欲望の残骸となって漂うだけだ。
その頃から2部と言われるホストクラブやキャバクラの営業が始まる。日の出営業だ。この時間から出勤して、彼らは「夜」を始める。
このコロナ禍でも「新宿11チャンネル」という老舗ファッションヘルスは早朝から行列をなしていた。
欲望に時間は関係ない。いつだって夜への扉が用意されているのが歌舞伎町なのだ。

