娘は連続殺人犯なのか?潔白を信じたい気持ちと拭えぬ疑念で揺れる心理戦を描く、ハン・ソッキュ主演の“父娘スリラー”<こんなに親密な裏切り者>

娘は連続殺人犯なのか?潔白を信じたい気持ちと拭えぬ疑念で揺れる心理戦を描く、ハン・ソッキュ主演の“父娘スリラー”<こんなに親密な裏切り者>

「こんなに親密な裏切り者」より
「こんなに親密な裏切り者」より / (C)2024 MBC

日本でも人気の高いドラマ「浪漫ドクター キム・サブ」シリーズや、第1次韓流ブームの先駆けとなった映画「シュリ」など数々のヒット作に主演し、30年以上トップを走り続けている俳優、ハン・ソッキュの2024年の主演ドラマ「こんなに親密な裏切り者」が、2月12日(木)よりCS衛星劇場にて放送される(毎週木曜夜11時より2話連続放送/全10話)。この作品は、最後まで連続殺人事件の真犯人がわからない極上ミステリーでありながら、その容疑者である娘と、娘の潔白を信じたいが疑念が拭えないプロファイラーの父との間で繰り広げられる心理戦を軸にした“父娘スリラー”でもある異色作だ。

■ある出来事をきっかけに、関係が冷え切ってしまった父娘

韓国最高のプロファイラー、チャン・テス(ハン・ソッキュ)は、高校生の娘・ハビン(チェ・ウォンビン)と二人暮らし。だが、その関係は冷え切っている。ハビンが幼い頃に起きたある事件について、テスはあろうことか娘を犯人だと疑って問い詰めたことがあり、以来、彼女は父に対して心を閉ざしてしまっている。

テスは関係を修復しようと試みているが、ハビンはほとんど話もせず、何の感情も宿っていない目で彼を見る。テスは、犯罪者の心は見抜けるが、娘の気持ちはわからない…。そして、彼は今でも、過去の事件の犯人がハビンだという疑念が拭えないでいるのだった…。
家庭のシーンの照明の暗さには監督の意図が
家庭のシーンの照明の暗さには監督の意図が / (C)2024 MBC


■「一番近い他人(=家族)について、どれくらい知ってるのか?」

そんなある日、山小屋で大量の血痕が見つかり、遺体の無い殺人事件が発生。テスは、調査を進めるうち、ハビンがこの事件に絡んでいることを知る。事件が発生するたびに、現場には必ずハビンの痕跡が残っていて、また、彼女の不可解な行動や発言が、テスの「娘が犯人かも知れない…」という疑念を深めていく。プロファイラーとして事件を解明しなければならない、だが、父として娘を信じたい、守りたい、との想いのはざまで、テスは葛藤する。

本作のプロデューサーは、作品について「家族などの自分に一番近い他人について、どれくらい知っていますか?という問いから始まった、信頼と疑いに関する話」と説明し、「普遍的な人間関係を中心に置き、ベールに包まれた娘と、その秘密に近づく父親が登場する。ジャンル的な面白さとヒューマニズムを感じることができるだろう」と、魅力を語っている。
事件の現場には、必ずハビン(チェ・ウォンビン)の痕跡が…
事件の現場には、必ずハビン(チェ・ウォンビン)の痕跡が… / (C)2024 MBC


■息苦しさを感じながらも、目が離せないストーリー展開

ストーリーは、正直、重苦しく、とてつもない緊張感で進んでいく。ハビンだけでなく、事件を取り巻く登場人物の誰もが疑わしく、また、予想をくつがえす展開もあり、5秒後、5分後、どうなるのだろう…そんな想いで、物語にどんどん引きこまれていく。息苦しさを感じながらも、片時も目が離せなくなっていくのだ。1話が終わるたび、「早く続きが見たい!」と思わせる“魔力”のある作品だ。

テスとハビンが暮らす家のシーンは照明が暗く、それも緊張感を与えている1つの要因。監督によれば、「普通のドラマでは、家庭は温かく描かれ、職場が冷たく描かれる傾向があるが、テスにとっては、家は未知の空間で全くわからない場所だ。逆に、職場である警察署は慣れた、答えを全て知っている空間なので、意図的に照明を明るくした」とのことだ。ハン・ソッキュは、その暗い照明について、重いシーンが続いて疲れてきたチェ・ウォンビンに「電気をあまりにも節約しすぎて、賞をもらうべきだね」と言って、笑わせたそうだ。

■「テスの悲劇は、家族にまで疑いを向けたこと」

ハン・ソッキュは、プロファイラーのテスについて、「“疑う人物”。相手が嘘をついているという気持ちを持って行動する。彼の悲劇は、疑いの焦点を自分の家族にまで向けてしまうこと」と説明し、テスのキャラクターを最もよく表すセリフは「なぜ嘘をつくんだ?」「嘘をつくな」と語った。

そして「テスは、娘に対して持ってはいけない心を持った、非常に劣ったひどい父親」と言い、「父が子供に深い許しを乞う、後になって悟った父の謝罪はどうあるべきか、それが家族に、父と娘にどのように伝わるのか…それを視聴者の方々にぜひ披露したかった」と、出演動機を語っている。
娘への疑念が拭えないテス(ハン・ソッキュ)
娘への疑念が拭えないテス(ハン・ソッキュ) / (C)2024 MBC


■チェ・ウォンビンとハビンのシンクロ率は「0%」

一方、ハビンを演じたチェ・ウォンビンは、「ハビンは父親に似て非常に賢く、相手を観察し把握する能力が並外れた人物。そして、感情が無いのではなく、感情表現が未熟な子。普通ではないけど、それだけ」と自身の役柄を分析。ハビンは、時には国内最高のプロファイラーの父も騙されるような巧妙な嘘もつく。

序盤は、心の中には深い感情があるのに、表には出さないハビンとは「シンクロ率0%」と言うほど性格が違う彼女は、ハビンが何を考えているのかがなかなか理解できず、かなり苦しんだそう。この作品の前に撮影したのが、明るいタッチのドラマ「怪しい彼女」(同名映画のリメイク)で、自分の気持ちに正直な主人公を演じていた為、切り替えも難しかったようだ。

ハビンについての情報が何かほしくて、監督に「サイコパスなのかソシオパスなのか、(設定を)決めてほしい」と言ったが、「重要なのは、そこではない。そこに集中しすぎないで」と言われ、そのアドバイスも当初は理解できなかったそう。「感情が過剰」と指摘されることもあったりして、自分に演じられるのだろうかと悩み、満足のいく演技ができない悔しさで泣くことも多かった。体重が4~5kg減ってしまったとのことだ。

だが、「ハビンが、なぜこうなったのか」を知った瞬間から、キャラクターが理解できたそう。全てを知った後に作品を見返すと、同じセリフでも違う受け止め方ができる箇所が多い、と言うチェ・ウォンビンは「もしかしたら、私もテスパパのように、ハビンを色眼鏡で見ていたようです」と語っている。

そんな努力もあって、何を考えているのか全くわからない薄気味悪さと好感度皆無の“チャン・ハビン”を見事に体現。初回の放送を見たチェ・ウォンビンの父は電話をかけてきて、「途中でテレビを消すところだった。最悪の娘だ」と言い、娘の頑張りを誉めてくれたそうだ。

ちなみに、彼女も演技をしながら、終盤まで真犯人が誰かは知らなかったとのことだ。
自分とは全く違うハビンを理解するのに、とても苦労したというチェ・ウォンビン
自分とは全く違うハビンを理解するのに、とても苦労したというチェ・ウォンビン / (C)2024 MBC


■ハン・ソッキュとチェ・ウォンビンの奇跡的な縁

このように、チェ・ウォンビンがハビンを演じられる大きな手助けとなったのが、父役のハン・ソッキュ。「撮影中はチャン・テスそのものでいてくださって、あるシーンでは、本当に憎い感情が沸き起こるほどの目つきと感情を見せてくださいました」と語り、「疑われると、こういう感情になるんだ…」と実感したそうだ。ハン・ソッキュは、台本に書かれている以上の感情を彼女に与えることが多く、「一緒に撮影するのがとても面白かった」とチェ・ウォンビンは回想している。

彼女にとって大先輩のハン・ソッキュとの共演は「負担が無かった、と言えば嘘になる」と言いつつも、撮影が進むにつれて、もう1人の父親のような存在になっていった、と語る。実は、2人には特別な縁があり、ハン・ソッキュの次女とチェ・ウォンビンは、何と同じ産婦人科で2日違いで生まれていたのだ。この奇遇にハン・ソッキュは驚き、「私は生涯、娘の誕生日のたびにウォンビンのことを思うだろう」と言って、彼女を感激させた。撮影中に彼女の誕生日があった時も、みんなの前で祝ってくれたそうだ。
撮影の合間には、平和な関係だったハン・ソッキュとチェ・ウォンビン
撮影の合間には、平和な関係だったハン・ソッキュとチェ・ウォンビン / (C)2024 MBC


■後輩たちが心酔する、ハン・ソッキュの人柄

ハン・ソッキュは、演技が始まった瞬間に目つきも周りの空気も変える驚異的な演技力はもちろん、その人柄にも共演した俳優は皆、心酔する。大ベテランなのに、常に謙虚で自分に厳しいが、いつも後輩たちを「変わりないか?」と気遣い、彼らの相談にも惜しみなく経験を踏まえたアドバイスをし、応援してくれる。そして、「どのように俳優を始めたのか?どんな考えで演技をするのか?」と尋ねて、相手を知ろうとする。そんな彼の周りには、どの現場でも撮影の合間には後輩たちが自然に椅子を持って集まってくる。

ハン・ソッキュの言葉は、悩みの多い後輩たちに大きな影響を与えている。「常に相手の演技を見て聞いて演技しなさい」との教えを胸に刻んでいる俳優は多い。チェ・ウォンビンは、演技に迷っていた時に、「我々の職業が最も警戒し恐れなければならないのは、カメラの前に立つのが怖くなることだ。楽しみなさい」と言われ、それが大きな支えとなった。そして「我々は本当に素敵な仕事をしている。最近の世の中で他人に深く共感し、人として生まれて人を理解し表現することがどれほどかっこいいか」との言葉に、俳優としての意志がさらに固くなったそうだ。

他にも、「浪漫ドクター キム・サブ」で共演したアン・ヒョソプには「演技、面白いだろ?うまくいけばもっと面白い」と語り、彼の演技への情熱に火を点けた。同じく「キム・サブ」で共演したユ・ヨンソクも40代に入って焦りが生まれた時、ハン・ソッキュに相談すると、「私は10年ずつ良い作品を残してみよう、と考えている。(30年余の俳優人生で)3つのヒット作を残したら、成功だと思っている」と答え、ユ・ヨンソクは「焦らなくてもいいんだ」と思えるようになったとのことだ。

このように作品が終わっても、人生の師として、皆、彼を慕い、「私が人生でお会いした俳優の中で一番かっこいい大人。演技を離れて、人としても多くの悟りを与える方」(チェ・ウォンビン)、「演技人生の恩人」(キム・ミンジェ)、「良い大人になるというのは、こういうこと」(ハン・イェリ)など、ハン・ソッキュへの称賛が止まない。そして、誰もが「先輩のような大人になりたい」と口をそろえる。
「こんなに親密な裏切り者」でも後輩俳優たちを虜にしたハン・ソッキュ
「こんなに親密な裏切り者」でも後輩俳優たちを虜にしたハン・ソッキュ / (C)2024 MBC


■ハン・ソッキュが撮影中、常に持ち歩いていた物

ハン・ソッキュの俳優人生の始まりは、今回の作品の放送局・MBCが1991年に開催した「公開タレント採用オーディション」に合格したこと。同局の専属俳優として、いくつものドラマで端役を演じた後、重要な役で出演したドラマ「息子と娘」が視聴率60%超の大ヒットとなり一気に人気者になり、その後活動の場を映画に移した。

ドラマ復帰後もMBCの作品には出演が無く、今回の「こんなに~」は実に30年ぶりの“故郷”への帰還となった。本作の製作発表時、彼は「撮影中、ずっと持ち歩いていたものがある」と言って、茶色く変色した紙を見せた、それは、採用試験に合格した当時の同局との「専属契約書」だった。

そして「29年ぶりに、母の手帳から見つけました。これを、なぜ母は持っていたのか、と読みながらいろいろなことを考えました。私にとって非常に意味深い出来事で、この作品は特別なのです」と語った。初心忘るべからず。そんな想いで持ち歩いていたようだ。ハン・ソッキュは、いつも新人俳優のように役を研究して学ぼうとし、いつも先に現場に来て、演技について悩んでいる。その姿に、共演者は感銘を受けている。

ハン・ソッキュは、他局での演技大賞の他、数々の受賞歴があるが、MBCの「演技大賞」では、今作で初めての大賞受賞となり、“故郷”に錦を飾った。また、チェ・ウォンビンも新人俳優賞を受賞した。

■その他、個性的な登場人物にも注目

本作には、テス父娘の他にも、感情より事実を重視する合理的なイ・オジン(ハン・イェリ)、相手への共感能力に長けたク・デホン(ノ・ジェウォン)という正反対のキャラクターの、テスの後輩プロファイラー2人や、テスと衝突する強力班の刑事、オ・ジョンファン(ユン・ギョンホ)など、個性的な人物が登場する。

謎が謎を呼ぶ連続殺人事件…ぜひ、テスと共に翻弄されながら、事件の解明を見守ってほしい。

◆文=鳥居美保
怪しい点だらけのハビン(チェ・ウォンビン)。本当に犯人なのだろうか…
怪しい点だらけのハビン(チェ・ウォンビン)。本当に犯人なのだろうか… / (C)2024 MBC



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