イラストそのもののように、人づき合いもライトで都会的だった和田誠さんとの別れ――天国に行く楽しみをもらいました|清水ミチコ

イラストそのもののように、人づき合いもライトで都会的だった和田誠さんとの別れ――天国に行く楽しみをもらいました|清水ミチコ

清水ミチコさんの「朝日新聞」連載エッセイ「まぁいいさ」(金曜日夕刊・月1回)をまとめた文庫本『時をかける情緒 まぁいいさ』が発売になりました。平成から令和へ、自由自在にかけめぐる清水さんの情緒の味わいを、少しだけお裾分けします。

お楽しみは天国で

和田誠さんがお亡くなりになりました。少々不謹慎かもしれませんが、週刊誌や新聞に掲載されていた『和田誠氏死去』という一行に(名前と死去という言葉がこんなに不釣り合いとは)と思ってしまいました。

名前全体がよくできたデザインの一部のように似合ってて、いつもほのぼのと明るく、おだやかな方でした。怒った顔を見たことがないほど、誰にでも優しく、映画やジャズ、ミュージカルについてはなんでもとことん教えてくれました。

それなのに長くつきあっていてもどこかふわっと淡白で、ライトなのです。イラストそのもののように、人づきあいもまた、誰もマネできないほど都会的な方でした。

小堺一機さんがモノマネした和田誠さん像を一度見たことがあるのですが、それは、照れて笑いながらボソッと「へへっ、めんどくさい」と言いつつ頭をかく、というだけのもの。知ってる人にはすぐわかる和田さんらしさで、私はなんてうまいんだ! と思い、ご本人に「知ってますか?」と、すぐ伝えました。(←ウザい人)

「そう言われれば確かに俺、よく言っちゃうかな、めんどくさいって」と笑っておられましたが、せっかくイラストを描いたのに、ギャラが振り込まれてない会社に、めんどうだからと文句の一言も言わなかったり、大きな受賞もそーっと辞退なさってたり。

特にすごい、と思ったのはご自身の本を人にさしあげる時、サインをなさらない。

その理由を聞いた時です。「そのうちさあ、本が邪魔になって売るかもしれないって時、宛名付きのサインなんかついてたら売りにくいだろ?」。淡白すぎ!

私のライブにも、渋谷にあった小さな劇場(渋谷ジァン・ジァン)から、最近の武道館公演まで、長年にわたる常連でいてくださいました。

モノマネも大好きだった和田さん。SFや怖い話もすごく上手で、なのに奥様の平野レミさんが「ねえ、あれ話してあげてよ、最後に壁から手が出るって怖い話」などと、オチを先に言われ、困惑して笑っちゃってる顔なども、大好きでした。

和田さんにもう会えなくて悲しいけど、ご夫妻で並んでる姿も好きだった私は、もうあのきれいなカップルは見られないのだな、と思うと二重に悲しいです。でも、天国に行く楽しみをもらったと思えばいいね。『お楽しみはこれからだ』というくらいで。

配信元: 幻冬舎plus

提供元

プロフィール画像

幻冬舎plus

自分サイズが見つかる進化系ライフマガジン。作家・著名人が執筆するコラム連載、インタビュー、対談を毎日無料公開中! さまざまな生き方、価値観を少しでも多く伝えることで、それぞれの“自分サイズ”を考え、見つける助けになることを目指しています。併設のストアでは幻冬舎の電子書籍がすぐに立ち読み・購入できます。ここでしか買えないサイン本やグッズ、イベントチケットも。