【種類別】絵巻物の主なジャンルと代表的な作品
以下では絵巻物の種類を、主に描かれた題材によって分類しました。それぞれに魅力的な作品が存在します。
物語を描いた絵巻物
鼠草子絵巻, Public domain, via Wikimedia Commons.
もっとも古いものでは王朝にまつわる絵巻物があり、中でも傑作といわれる《源氏物語絵巻》は、平安貴族の繊細な心情や宮廷の豪華な生活、風俗を伝える絵巻の最高峰です。
他には、古代から口承で伝わった民話や伝説などを指す「説話」を題材とした絵巻があり、当時の人々の信仰や教訓を伝える役割を果たしました。鎌倉時代にかけて編まれた『今昔物語集』のような説話集をもとに、これらを題材とした絵巻が制作されています。
室町時代には御伽草子(おとぎぞうし)という短編物語が多数生まれ、現代の『かぐや姫』で知られる《竹取物語》や、浄瑠璃の名前の由来にもなった《浄瑠璃物語絵巻》などが作られました。コミカルな話や親しみやすい物語が多く、庶民の間に広がる文化の担い手となりました。
寺社にまつわる絵巻物
信貴山縁起, Public domain, via Wikimedia Commons.
仏教が社会に深く浸透する中で、各宗派の教義の布教や寺社の権威を示す目的からも、絵巻物が制作されました。その多くは「縁起絵巻」という名前で知られています。
その他に、高僧の生涯や功績を伝記として描いた絵巻物も、多くは関連する寺社が所蔵しているものです。また、お経を題材にした「絵因果経(えいんがきょう)」など、経典の内容を絵解きして、わかりやすく伝えようとした絵巻物も見られます。
合戦や祭礼を描いた絵巻物
平治物語絵巻 (三条殿焼討), Public domain, via Wikimedia Commons.
戦乱の時代には、合戦絵巻も多く作られました。その代表例である《平治物語絵巻》は、激しい合戦の様子をリアルに描いた質の高い作品です。
また、武士や庶民の動的な生活を描いた絵巻物として、祭礼絵巻があります。祭りの賑わいや当時の風俗を知る貴重な資料となっています。
異形や妖怪を描いた絵巻物
真珠庵蔵『百鬼夜行絵巻』(部分) 伝土佐光信(室町時代), Public domain, via Wikimedia Commons.
恐怖とユーモアが混在する、異形や妖怪を描いた絵巻物も重要なジャンルです。独創性が豊かな《百鬼夜行絵巻》もその一つに数えられます。
また、伝説の妖怪を討伐する物語を描いた《酒呑童子絵巻》は数多くのバリエーションが存在し、国内だけでもさまざまな「本」があります。また、酒呑童子退治の物語に関連して、《土蜘蛛草子》や《綱絵巻》といった作品もあり、歌舞伎や舞踊などの題材にもなっています。
その他の絵巻物
この他にも、風景を主題としたもの、年中行事を表現したもの、能を描いた「能絵」の絵巻物など、多種多様な作品が存在します。
絵巻物の鑑賞方法
道成寺縁起絵巻, Public domain, via Wikimedia Commons.
絵巻物が作られた当時の人々は、絵巻物を持った両手を肩幅ほどに開き、右から左へと端から順に巻き取りながら鑑賞していたことがわかっています。美術館や博物館ではあらかじめ長く開かれた状態で展示されるため、立ったまま右から左に進んで鑑賞することが一般的です。
展示期間中には「巻替え」と呼ばれる展示替えが行われることがあり、複数回にわたって足を運ぶと、同じ絵巻物でも異なる場面を楽しめます。
