今後遭遇する可能性が高い「AI詐欺」の具体的手口
では、具体的にどのような手口が予想されるのでしょうか。ブリエディスさんが警告する典型的なパターンは次の通りです。
■ディープフェイク音声・映像詐欺
上司や家族、友人の声や映像をAIで複製し、電話やビデオ通話をかけてくる手口です。「事故に遭った」「会社の送金でトラブルが起きた」などと緊急事態を装い、即座の振り込みやパスワード変更を要求します。声や表情が本人そのものであるため、冷静な判断が難しくなります。
■高度なサポート詐欺とワンタイムパスワード搾取
銀行やクレジットカード会社など、実在する企業のサポートセンターを装い、AIチャットボットや自動音声で連絡してきます。「不正利用が疑われています」と不安をあおり、本人確認と称してワンタイムパスワードを読み上げさせ、アカウントを乗っ取る手口です。
■ビジネスメール詐欺の巧妙化
取引先の担当者になりすまし、請求書の振り込み先の変更を依頼します。過去のやりとりをAIが学習し、文体や言い回しを忠実に再現するため、長年取引のある相手でも違和感に気付きにくくなっています。
■ロマンス詐欺・データ収集型詐欺
マッチングアプリやSNS上で、AIが生成した架空の人物になりすまし、恋愛感情を利用して投資話や資金移動を持ちかけます。また、クイズや診断、プラグイン、正体不明のアプリなどを通じて集めた個人情報が、将来的ななりすましや音声・映像生成の材料として再利用される点にも注意が必要です。ブリエディスさんは、「多くのAI詐欺はデバイスを直接攻撃するのではなく、時間に追われた判断を狙っています」と指摘します。
緊急の送金指示を受けた場合に役立つ“30秒の確認”
こうした脅威から身を守るために、特別な技術スキルは必要ありません。重要なのは、日々の行動習慣を見直すことです。まず、緊急の連絡こそ疑う習慣を持ちましょう。詐欺師は必ず「今すぐ」「至急」「誰にも言わないでほしい」といった言葉を組み合わせ、冷静な判断を妨げてきます。感情を揺さぶられたときこそ、「これは判断をハッキングされているかもしれない」と一度立ち止まることが最大の防御になります。
次に、「アウト・オブ・バンド(別経路)」での確認を徹底することです。連絡が来たルートとは異なる手段で事実確認を行いましょう。例えば、上司から電話で送金指示があった場合、一度電話を切り、社内チャットやあらかじめ登録している番号にかけ直して確認します。この30秒の確認が、数時間、あるいは数日に及ぶ後処理や大きな金銭的被害を防ぐことになります。
