大腸がんの多くは、実は「ポリープ」から始まることをご存じでしょうか。ポリープの段階で発見・切除できれば、がんの発生を防ぐことができます。しかし、痛みや違和感がほとんどないため、知らないうちに進行してしまうことも。そこで、蓮尾胃腸内視鏡クリニックの蓮尾先生に大腸ポリープの正体と、大腸カメラで守れる「命のリスク」について伺いました。
※2025年11月取材。

監修医師:
蓮尾 直輝(蓮尾胃腸内視鏡クリニック)
川崎医科大学卒業後、神戸大学医学部第二内科に入局。日本生命済生会 日本生命病院、公立御津病院(現・たつの市民病院)、昭和医科大学横浜市北部病院 消化器センターなどで経験を積み、神戸大学大学院医学研究科博士課程を修了。西脇市立西脇病院、柏原赤十字病院(現・兵庫県立丹波医療センター)、それいゆ会 こだま病院、進英会 大阪内視鏡クリニック、三好内科などを経て現職。医学博士。日本内科学会認定内科医・日本消化器内視鏡学会専門医。
「ポリープ=前がん病変」! 早期発見が命を守る
編集部
大腸ポリープとはどのようなものですか?
蓮尾先生
大腸ポリープは、大腸の粘膜が局所的に盛り上がった「できもの」です。多くは良性ですが、その中の「腺腫(せんしゅ)性ポリープ」は時間の経過とともにがん化する可能性があります。大腸がんの多くは、この腺腫性ポリープから発生するといわれており、ポリープの段階で発見して切除できれば、がんを防ぐことができます。
編集部
「腺腫性ポリープ」が要注意なのですね。
蓮尾先生
そうですね。ただし、注意すべきなのはそれだけではありません。最近では、大腸がんへ進行する「第2のルート」として陥凹型腫瘍(かんおうがたしゅよう)、さらに「第3のルート」として鋸歯状(きょしじょう)病変も注目されています。これらは通常の内視鏡では見つけにくいため、AI内視鏡や特殊光、拡大内視鏡などを用いて慎重に観察することが重要です。発見できれば腺腫性ポリープと同様に、切除によってがん予防が可能です。
編集部
何が原因でポリープになるのでしょうか?
蓮尾先生
肉類や脂質の多い食事、野菜・食物繊維の不足、喫煙、過度な飲酒、肥満、運動不足などがリスク要因といわれており、食生活や生活習慣の影響が大きいですね。さらに、家族に大腸ポリープや大腸がんの既往がある場合、遺伝的な体質も関係している可能性があります。
編集部
ポリープができやすい人の特徴はあるのでしょうか?
蓮尾先生
40代以降の男性に多く見られますが、最近は30代でも発見されるケースが増えてきています。現代は食生活が欧米化し、脂質の多い食事やストレス過多の生活が腸内環境を乱していると考えられています。そうした生活習慣の積み重ねが、ポリープの発生リスクを高めているのです。
編集部
がん化するまでにどのくらいの時間がかかるのでしょうか?
蓮尾先生
一般的に、腺腫ががん化するまでには5〜10年ほどかかるといわれています。そのため、定期的に大腸カメラを受けて、早い段階でポリープを取り除いておくことが何より大切です。
ポリープの放置が危険な理由を医師が解説!
編集部
ポリープがあっても、気づかないことが多いのですか?
蓮尾先生
はい。ポリープは非常に静かに進行しますし、痛みがなく便の異常も出ないまま大きくなることが多いのです。中には出血しても便に混ざる程度で、肉眼ではわからないこともあります。自覚症状が出るころには、がん化している可能性が高いため注意が必要です。
編集部
がんになっても症状が出ないことがあるのでしょうか?
蓮尾先生
大腸がんは「沈黙の病気」と呼ばれるほど、初期症状が乏しいことが特徴です。便秘や下痢、血便、体重減少などの症状が出るころには、すでに進行しているケースが少なくありません。だからこそ、症状の有無ではなく「年齢」や「生活習慣」を基準に検査を受けることが重要です。
編集部
無症状でも検査を受けた方がよいということですね?
蓮尾先生
その通りです。「何も症状がないから大丈夫」と思っている人こそ検査が必要です。大腸カメラならポリープの有無を直接確認できますし、便潜血検査では見つからない微小な病変も発見可能です。40歳を過ぎたら、健康診断と同じ感覚で一度受けておくとよいでしょう。
編集部
大腸検査は痛みがあるイメージがあります。
蓮尾先生
最近では鎮静剤を用いて、眠ったような状態で受けることができます。スコープは細く改良されていますし、操作技術も進化し、腸の形に合わせて挿入することで痛みが少なく、以前より格段に快適に受けられる検査になっています。大腸カメラは怖い検査ではなく、むしろ「安心するための検査」なのです。

