たまたま、ママ友・綾とタクシーに乗ることになった、るい。綾から「相乗り」の提案を受けるも、綾はお金を持っていなかったことが発覚し…。
タクシーで「相乗りしよう」と言うママ友
カフェでの一件から、数週間後。
幼稚園の行事で、市内の大きなホールへと集まることになりました。
現地集合だったため、私は娘と2人で大通りへ向かい、タクシーを待っていました。 すると、背後から「るいさーん!」と呼ぶ声がしました。
綾さんです。
彼女もまた、息子の手を引いてかけ寄ってきました。
「タクシー待ってるの?全然、つかまらないよね。よかったら、相乗りしていかない?その方が安いし」
私は、一瞬、躊躇(ちゅうちょ)しましたが、前回の件ですんなり返金してくれたことが頭をよぎりました。(相乗りで安くなるなら…)と、彼女の言い分にも納得しました。
「いいよ。一緒に乗ろう」
ようやくつかまったタクシーに乗り込み、車内は子どもたちのにぎやかな声で満たされました。タクシーは20分ほど走り、綾さんとたのしいおしゃべりに花を咲かせていました。「相乗りしてよかったかも」と、思い始めていた時…ホールの屋根が見えてきました。
「もうすぐ、着くね」
私の言葉に対し、綾さんは急にだまりこみ、ただ、口元に弱々しい笑みをうかべるだけでした。
(綾さん、どうしたんだろう…)
目的地に到着し、運転手がメーターを止めました。運賃は3500円。
ママ友の目的は「明確な搾取」
Ⓒママリ/画像の生成にAIを活用しています
「あ、あのね、るいさん。……本当にごめんなさい。今、手持ちがなくて。カードも忘れちゃって…」
頭の中に、真っ赤な警告灯が点滅しました。
「……そっか、じゃあ前みたいにバーコード決済でも……」
私が言いかけると、綾さんは「そうだね」と言いつつ、スマホを触り始めました。しかし、すぐに表情をくもらせます。
「ごめん、今、確認したら、ちょっと残高が…。家に帰ったら、また別の口座のカードがあるから、それで、お金おろして後日、返すね」
絶望が、波のように押し寄せてきました。
彼女は、お金がないことを知っていて、タクシーに乗ったのです。
自分から「相乗り」を持ちかけ、相手(私)が払うことを前提に…。これは「ルーズ」という言葉で、片付けられるものではありません。明確に「搾取」を目的とした行為でした。
おそらく、タクシーをつかまえようとしていた私を、待ちぶせしていたのでしょう。きっと私は、どこまでも舐められているのです。
「……わかった。とりあえず、払っておくね」
時間も迫ってきていたため、私はノドから声をしぼり出しました。

