耐性化した患者にも有効
既治療患者の奏効率55.8%
分子標的治療薬の大きな課題である「耐性化」に対しても、タレトレクチニブは効果を示しています。
臨床試験では、クリゾチニブやエヌトレクチニブなど既存のROS1阻害薬を使用した後に効かなくなった患者さん(既治療患者)も対象に含まれました。統合解析の結果、既治療患者の奏効率は55.8%、無増悪生存期間の中央値は9.7カ月でした。
林教授は「一回ROS1阻害薬が効かなくなった患者さんは、ほかのROS1阻害薬がかなり効きづらくなる」という従来の状況を踏まえ、半分以上の患者さんで腫瘍縮小が得られたことの意義を説明しました。
G2032R変異にも効果を発揮
耐性化の原因として知られるROS1遺伝子変異の中で、最も多いのが「G2032R変異」です。この変異が起きると、従来のROS1阻害薬は効きにくくなっていました。
林教授は「例えば、ある日突然鍵穴の形が変わって、今までの鍵が刺さらなくなる」という例えで耐性化のメカニズムを説明し、タレトレクチニブについては「マスターキーみたいな形で、ROS1であればどんな形に出合っても鍵がきちんと開く」と表現しました。
実際に、G2032R変異を持つ患者さんでも61.5%で奏効が得られており、これもタレトレクチニブの有効性が高い理由の一つと考えられています。
副作用プロファイルの改善
めまいの頻度と程度が軽減
既存のROS1阻害薬で問題となっていた浮動性めまい(ふらふらする感覚)について、タレトレクチニブでは発生頻度・程度ともに改善がみられます。
統合解析では、浮動性めまいの発生率は21.3%で、ほとんどがグレード1~2(軽度~中等度)でした。既存薬のレポトレクチニブでは57.7%、エヌトレクチニブでも高頻度で報告されていたことと比較すると、大きな改善といえます。
林教授は「これまでのTRK阻害によってもたらされた副作用に関しては、かなり軽減されているように感じる」と、臨床での印象を述べました。
肝機能への注意と対処法
一方で、タレトレクチニブで注意が必要な副作用として肝機能障害があります。臨床試験では多くの患者さんで肝酵素の上昇が見られ、ASTの上昇を認めたのは71.9%、ALTの上昇を認めたのは67.6%でした。
ただし、日本化薬の鈴木瑠氏は「ほとんどが症状を伴わない、いわゆる不顕性の検査値の異常」であり、添付文書に従って減量や休薬を行えば、多くの場合マネジメントが可能と説明しました。
林教授も「これまでの経験では、副作用が強いという薬ではなかった」と述べています。ただし、肝不全が0.3%の患者さんで報告されているため、定期的な肝機能検査によるモニタリングが重要とされている。

