最近、「転びやすくなった」「歩くのが億劫」と感じることはありませんか? 年齢とともに起こる筋肉や関節の衰えは、放置すると要介護状態につながることもあります。そうした“運動器の衰え”に早く気づき、予防・改善するためのキーワードが「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」です。今回は、ロコモの原因や予防法、治療について「世田谷かくた整形外科 成城学園前院」の角田先生に解説していただきました。

監修医師:
角田 篤人(世田谷かくた整形外科 成城学園前院)
東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。その後、東京慈恵会医科大学整形外科学講座。東京慈恵会医科大学附属第三病院整形外科診療医長、東京慈恵会医科大学整形外科学講座講師などを務める。2023年、東京都世田谷区に「世田谷かくた整形外科 成城学園前院」を開院。医学博士。日本整形外科学会専門医・認定スポーツ医・認定リウマチ医・認定リハビリテーション医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
ロコモとは
編集部
ロコモとは、どのような状態を指すのでしょうか?
角田先生
運動器の障害によって立ったり歩いたりする機能が低下し、要介護のリスクが高まっている状態をロコモと言います。運動器とは、骨・筋肉・関節・靭帯・腱・神経など、体を動かすために欠かせない組織や器管の総称です。日本整形外科学会が2007年に提唱した概念で、近年の高齢化社会において重要な予防医療のテーマとなっています。
編集部
ロコモになりやすい人の特徴はありますか?
角田先生
高齢者に多いのはもちろんですが、若い人でも運動不足や生活習慣の乱れがあると将来的なリスクが高まります。また、骨粗しょう症、変形性関節症、脊柱管狭窄症などの整形外科疾患を抱えている人は、ロコモの進行が早い傾向にあります。
編集部
ロコモを見つける方法はありますか?
角田先生
「ロコチェック」と呼ばれる簡単なセルフチェックリストがあります。以下の7項目を確認するだけで、ロコモのリスクを把握できます。この7項目のうち、1つでも当てはまればロコモの可能性があるので、早めの受診をおすすめします。片足立ちで靴下がはけない
家の中ですべる、つまずく
階段を昇るとき、手すりが必要
やや重い家事をおこなうのが難しい
2kg程度(1Lの牛乳二本程度)の買いものをしたとき、 持って帰るのが難しい
15分くらい続けて歩けない
横断歩道を青信号で渡り切れない
ロコモの予防法
編集部
「介護が必要になる人の多くが運動器の障害を抱えている」というのは本当ですか?
角田先生
はい。2019年のデータでは、介護が必要になった原因の24.8%が運動器の障害に起因しています。特に「骨折・転倒」「関節疾患」などが多く、要介護となるのが、決して大きな病気からだけでなく、日常生活の自立度と密接に関連していることがわかります。
編集部
ロコモの予防には、どのような対策が有効なのでしょうか?
角田先生
最も効果的なのは「継続的な運動」です。スクワットや片足立ちなど、下肢の筋力を維持するトレーニングが特に重要です。日々の生活の中で動くことを意識し、歩く機会を増やすことも大切です。
編集部
食事や栄養の面で、注意すべきことはありますか?
角田先生
筋肉や骨の健康を支えるためには、タンパク質やカルシウム、ビタミンDやビタミンKの摂取が欠かせません。特に高齢者はタンパク質が不足しやすいので、意識して取り入れてほしいですね。
編集部
ロコモ予防に関して、日常生活で意識すべきことがあれば教えてください。
角田先生
転倒を防ぐために室内の段差や滑りやすい場所に注意したり、外出時は安定感があり自分の足にあった靴を選んだりすることが大切です。また、「最近なんとなく動きづらい」と感じたときには、整形外科に相談することをおすすめします。

